「37歳まだ若手」 又吉直樹さんに聞く人生100年時代
「一番考えているのは(売れなくなって)生活水準をめちゃくちゃ落とせるかどうか、という自問です。大金を稼ぐプロスポーツ選手が引退後に借金まみれになるケースがあります。大金を稼ぐと生活水準が上がってしまい、引退して収入が減ってもお金を使いすぎてしまうからです。まあ、自分は大丈夫やなあ、という確認はしています」
「あと5年はやりたいことが決まっています。今は自分の表現欲求があるので、全力でやっています。だから42、43歳の時に次のタイミングを迎えると思っています」
――長く活躍しなければ食べていけないという意味では、お笑いの世界も変わりますね。
「僕らや下の世代がお笑い以外の分野にも挑戦しているのは必然だと思います。さらにその下の世代ではお笑いを志す人が急減しています。お笑いがテレビで輝いていた時代があって、僕らはそれにあこがれて飛び込みました。今はお笑い芸人がいっぱいいるから、大変そうだからということであこがれの職業ではなくなっている。僕らの世代が何か新しいことを模索して、世界を広げて次の人たちの雇用の場を生み出してあげる時期に来ています」
自分への投資、若いうちに
――人工知能(AI)の進化で現在ある半数の仕事がなくなるとの研究結果があります。若者の働き方も変わりますか。
「職を奪われるというより、誰でもできることをAIに任せてしまえるならいいですね。古代ギリシャで哲学者が育ったのも、自分では働かずに考える時間が持てたからです。スケジュールを完全に管理してくれるアプリで原稿の全ての締め切りや自分の執筆スピードを把握していて、『設定だけでも今、考えておかないと大変なことになりますよ』と教えてくれるとか」
――若いうちにやっておいた方がよいことはありますか。
「将来の自分にどんな投資ができるか、というのはありますね。僕は本好き、音楽好き、ファッション好きで、演劇も好きでした。仲間が家賃6万円の部屋を借りていたのを風呂なし2万5000円に抑えて、月に本10冊、CD10枚くらい買っていました。自分の快楽のためだったのですが、それが今への投資になったのかなと思います」