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へき地勤務などを経た後、世界保健機関(WHO)で20年働いた。

医療を通した外交の仕事もできるのではと考え、ある誘いに乗って思い切ってWHOに転じました。水が合ったのでしょう。結局長く働くことになりました。国際機関にいると、どうしても国のあり方を考えたり、日本と外国を比較したりする機会が増えます。そんなときに印象に残ったのが『なぜ国家は衰亡するのか』です。

国が滅ぶ原因は外からの侵略ではありません。内側から腐るのです。グランドデザインもつくらず、本来なすべきことをせず、微調整や対症療法だけでやり過ごそうとするからです。そういうことがよくわかります。

似たような本として、吉本隆明さんの『最後の親鸞』があります。戦乱や飢饉(ききん)で苦しむ中世の人々に当時の仏教界はまったく対応できていませんでした。唯一それを直視したのが親鸞でした。彼は宗教の枠を出て思想家となります。閉塞感に満ちた今の時代にも新しい思想を語れる人が必要ではないでしょうか。

今、オフタイムに打ち込むのは剣道と世代を超えて明るい社会をつくっていくためのNPO活動だ。

高校時代以来、剣道からは遠ざかっていたのですが、年をとってからでもできるものだと知って63歳で再開しました。技術ではなく、剣道の精神を説明しているのが、私の師匠でもある盈進(えいしん)義塾興武館という道場の小沢博館長が自費出版した『剣道は哲学である』という小冊子です。剣道は効率性など求めない無償の行為であるとの説明に深くうなずきました。

本は大好きですが、最近小説を読まなくなっていました。しかし「全世代」というNPOの活動のために、若い人の気持ちを理解しようと、また読むようになりました。新鮮な発見もあります。


(聞き手は編集委員 山口聡)
[日本経済新聞朝刊2019年6月1日付]

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