新工法、コスト抑え導入 「存在効用のある人間に」
清水建設社長 井上和幸氏(上)

いのうえ・かずゆき 81年(昭56年)早大院修了、清水建設入社。13年執行役員、15年取締役専務執行役員。16年4月から現職。東京都出身。
施工のため、クレーンを組み込んだ大屋根を押し上げていく時、なんと屋根が傾きかけたのです。コスト削減が原因ではなく、他に原因があることがすぐにわかりましたが、直るまではサラリーマン人生の危機を肌身で感じましたね。
この現場では図面のチェックやモノの手配などが主な業務でした。大きな現場だったので見学者対応なども任され、良い勉強になりました。
横浜支店時代の最後、桐蔭学園の仕事をいくつも担当した。
横浜地方裁判所にあった「陪審法廷」を移築復元する案件を担当した時のことです。約8割が地下で大きな屋根を6点で支えるという凝ったデザインで、難工事が予想されました。難しいデザインにこだわる設計士とは何度もぶつかりながら、移築を実現しました。
ギラギラしていた私に発注者側の桐蔭学園の先生が「存在効用のある人間になりなさい」と声をかけてくれました。他人に頑張りたいと思わせるような存在、存在価値のある人間を目指しなさいとの意味です。この言葉を今でも大事にしています。
あのころ
建設業界では1990年前後に全天候型の自動施工技術の開発が盛り上がった。当時は現場ごとにシステムを合わせる必要があり、費用もかかるため、普及しなかった。現在、技能労働者が減少する中、ゼネコン各社の間ではロボットなどの技術開発を再び加速している。
建設業界では1990年前後に全天候型の自動施工技術の開発が盛り上がった。当時は現場ごとにシステムを合わせる必要があり、費用もかかるため、普及しなかった。現在、技能労働者が減少する中、ゼネコン各社の間ではロボットなどの技術開発を再び加速している。
[日本経済新聞朝刊 2019年7月23日付]