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責任分担が焦点

グローバル・イシューの多くは将来の帰結を確実に予見できないため、個別の利益(各国や個人の利益)が重視され、対応は先送りされがちだ。W・ノードハウス著『気候カジノ』(藤崎香里訳、日経BP・15年)は、経済学の立場から、地球温暖化は人間の経済活動や意思決定に起因した問題であることを指摘する。科学的コンセンサスは100%の合意ではないため、懐疑論が入る余地があることを認めた上で、懐疑論に丁寧に向き合うことが温暖化対策を進める上で必要だという主張はうなずける。

温室効果ガス排出量削減は各国の経済活動や人々の生活に関わる問題であるため、国家間協議では削減の責任をどう分担するかが焦点になってきた。宇佐美誠編著『気候正義』(勁草書房・19年)は、先進国と途上国の間の分担だけでなく世代間正義を含めどのような分配が正しいのか(分配的正義)についての議論の必要性を説く。日本では、欧米に比べ温暖化は争点化していない。それが人々の無関心の結果だとすると、私たちは無自覚にこの重要な問題の先送りに手を貸していることになる。

[日本経済新聞朝刊2019年8月10日付]

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