社長就任で渡された『人を動かす』 父親に学ぶ統率力
GEジャパン社長兼CEO 浅井英里子氏

浅井英里子氏と座右の書・愛読書

あさい・えりこ 1992年慶大法卒。ソニー、日本マイクロソフト、GEヘルスケア・ジャパンを経て、2013年日本GE(現GEジャパン)執行役員。18年から現職。
子供の頃は詩を読むのが好きで、ヘルマン・ヘッセの詩集を勉強机に置いていました。大人になってからは、政治やビジネスに関する書籍を読むことが多いです。大学時代に1年間を過ごしたロンドン大学では、ものすごい量の課題図書と向き合いました。今でも英語の原書を読みます。
留学から帰国後、国際的な学生団体の「AIESEC(アイセック)」に入会しました。そこで出合ったのが、国連の「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発表した報告書をまとめた『Our Common Future』(邦題『地球の未来を守るために』)です。
持続可能な開発という概念を初めて提唱した一冊で、GEジャパンでの仕事にもつながっています。「SDGs(持続可能な開発目標)」の重要性が高まっている今、読み返しても、30年以上前の報告書とは思えないほどのデータや示唆に富んでいます。
外交官にも憧れましたが、日本の国力は技術だと考え、女性が活躍できそうなソニーに入社しました。盛田昭夫会長(当時)が入社式で「ソニーがあわなければすぐ辞めていい」とおっしゃったのを覚えています。仕事への情熱が求められていると感じました。

入社4年目にドイツに赴任しました。盛田さんが共著された『「NO」と言える日本』は、世界で働くために必要な心構えの指針になりました。ビジネスの世界では、主張すべき事は臆せず発言して主張すべきです。交渉相手の「NO」を「YES」に変える粘り強さも求められます。世界が米中の二極化時代へ向かうなか、日本の発言力がますます問われることになるでしょう。
出産後にマイクロソフト日本法人に転職しました。政策渉外担当としてビル・ゲイツ会長(同)来日の際に、様々なアテンドをする機会に恵まれました。ものすごい集中力で情報を分析し、知恵に変える才能に驚きました。『The Road Ahead』(邦題『ビル・ゲイツ未来を語る』)は、そんな希代の起業家がテクノロジーの将来を予測した一冊です。マイクロソフト入社のきっかけにもなりました。