農業に生かす中国古典 栽培に人材育成にも
日本農業法人協会会長 山田敏之氏

日本農業法人協会会長 山田敏之氏
農業法人を設立し、事業を大きくする過程で様々な本を手にとった。
中国の古典から教えられることがたびたびあります。いま一番はまっているのは、古代の書『易経』をわかりやすく訳した『超訳 易経 陰』と『超訳 易経 陽』です。人生の流れはまるで月の満ち欠けのようなもの。まん丸のときもあれば、ゼロになるときもある。その時々にどんなことに注意したらいいかを学びました。
栽培しているネギが数年前に台風で被害を受けました。それ自体はマイナスですが、だからこそより大きな災害に備えるきっかけになる。かつて業績がぐんぐん伸びていたときに栽培がおろそかになり、品質が落ちてしまったことも思い出しました。テングになってはいけないんですね。様々な体験を通して感じていたことを、この本で整理することができました。
田口佳史さんの『書経講義録』も興味深く読みました。リーダーはどんな人間であるべきかを説いた本で、予測しがたいことに警戒し、規則や規範を外してはいけないといったことが書いてあります。内容がとても具体的なんです。当たり前のことに思えますが、それが大昔に書かれ、いまも読み継がれている。そのことが面白い。
従業員が増える中で、社員教育でも書物が指針を示してくれた。
京大で西田幾多郎に学び、神戸大で教授を務めた森信三さんの『修身教授録』も感銘を受けました。教員を目指す学生たちへの授業の内容をまとめた本です。あなたたちは日本を背負う子どもたちを教える立場になるのだから、覚悟を持って学んでほしい。自分を律すべきだというメッセージに触れ、背筋が伸びる思いがしました。