トヨタ系トップ営業、ガツガツせずにデジタルで種まき
トヨタモビリティ東京 三浦大忠さん
3年目で仕事に慣れてからも順風満帆ではなかった。ちょうど自身の結婚式を目前にした頃だ。店舗で10日間の販売キャンペーンを立ち上げ、スタッフ8人で20台以上の販売目標を立てたが、三浦さんは1台も売れなかった。悔しくて涙を流した。

「そういう時に限って話しやすいお客さまの所に行きがち。でも車っていきなり売れるものじゃない。常に種をまいてないといつ芽が出るかわからない。その時は種まきをおろそかにしてしまっていた」。反省するとともに、種まきの大切さを実感した。
思わぬ所から芽が出て花開いた経験もある。ある朝、納車のために早く出勤すると、通りすがりの男性から「おーい、車の空気圧を見てくれ」と話しかけられた。店の工場に案内して対応すると、後日「あんたが気に入った。嫌な顔もせず対応してくれた」と車の購入につながった。今も付き合いが続いている。
トヨタの販売店では20年5月から全国的に「全車種併売」が始まり、旧トヨペット店だった高島平店も難しい局面を迎えている。トヨペット店の専売だった「ハリアー」「アルファード」などの人気車種が他店でも取り扱えるようになり、選ばれる店と営業担当になるための努力と工夫を一層求められている。
「デジタルは業務効率化につながるが、顧客との関係まで自動で深めてくれない。季節の挨拶を欠かさないなど、どれだけ絆を深められるかが問われている」。三浦さんは人と人のつながりこそ営業の基本、と実直に種まきを続けている。
(名古屋支社 林咲希)
みうら・ひろただ
09年拓殖大商卒、東京トヨペット(現トヨタモビリティ東京)入社。高島平店で販売担当、現在は営業グループの担当係長。新人賞や優秀賞など社内表彰の常連で法人顧客の新規開拓にも取り組む。
09年拓殖大商卒、東京トヨペット(現トヨタモビリティ東京)入社。高島平店で販売担当、現在は営業グループの担当係長。新人賞や優秀賞など社内表彰の常連で法人顧客の新規開拓にも取り組む。
[日経産業新聞 2021年7月9日付]