危機下ではトップダウン、社長の力で「ワンチーム」に
アシックス 広田康人社長(下)

三菱商事時代の広田社長(中央)。「上が決めてまとめる」リーダーの姿勢を学んだ
――手本にしている経営者はいますか。
「アシックスでは尾山基会長はもちろんですが、創業者の鬼塚喜八郎氏は特に意識しています。鬼塚氏は商品を開発するとき、まずトップ選手を押さえて下に普及させる『頂上作戦』を取ったといいます。一点に集中する『きりもみ作戦』というのもありました。リーダーが方針をはっきり示し、それを徹底するということです。その姿勢から学ぶことは大きいです」
――リーダーとして、どんな場面で喜びややりがいを感じますか。
「成果が上がった後の打ち上げでみんなで飲んだときのことはよく覚えています。『仲間と一緒に』というのはキーワードですね。先日もあるマラソン大会でメタスピードを履いた選手がトップで帰ってきたときは皆でガッツポーズしました。私はわくわくしながら仕事ができて、自分たちの成果を実感できるような会社を目指しています」
「スポーツメーカーにとって、このわくわく感というのは大切なことです。サポートをした選手が成績を上げたり、世に出した商品が受け入れられたりした場合にもわくわく感があります。仕事はつらいこともありますが、時には喜びや感動もあります。社員のみんながそのようにわくわく感を感じながら、成長してほしいと思っています」
(佐藤諒)
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毎朝6キロランニング
毎朝のランニングを雨の日以外は欠かさない。午前6時前に出発し、6キロの決まったコースを走っている。「50歳から始めました。三日坊主なたちですが、ランニングだけは続いています。よい気分転換になっているのだと思います」
最近は「自社のシューズを履いて走る楽しみも増えた」という。開発の現場に頼まれ、シューズをテストしてレビューすることも多い。それだけに「気の利いたコメントをするために、神経を研ぎ澄まして走っていますよ」。