薬業界へ転身、1年で優秀表彰 競合と売り場でタッグ
エスエス製薬 西本朱里さん

エスエス製薬の西本朱里さん
エスエス製薬の西本朱里さん(32)は東海、関西エリアのドラッグストアに看板商品の解熱鎮痛剤「イブ」などを売り込んでいる。製パン企業の営業担当から、2018年にエスエス製薬へ転じた。畑違いにもかかわらず、わずか1年後に同社の営業部門で成績上位者5%を表彰する賞を受けた。ライバル企業と共同販促を仕掛けるなど、時に大胆な提案力を発揮している。
西本さんは大手ドラッグストアチェーンの東海、関西エリアを担当している。POS(販売時点情報管理)データなどから製品ごとの売れ行きを分析し、販売促進策などを提案する。
営業現場にはドラッグストアのバイヤー、競合他社の営業など様々な人が関わる。西本さんの強みは幅広い人脈を通して、業界の流れや消費者の動きをつかむことだ。例えば「店舗の新規オープンや改装開業が人間関係を築くチャンスになる」という。
新しい売り場が立ち上がる際、複数のメーカーの担当者が集まり、製品や店頭販促(POP)などを配置する場面がある。西本さんは他社の担当者に声をかけて手伝ったり、昼食時に積極的に話しかけたりする。新型コロナウイルス禍が広がる前は取引先や業界の懇親会などでも交流先を広げてきた。
垣根を越えたネットワークで営業企画を成功させたこともある。20年2~3月、エスエス製薬は花粉などのアレルギー専用鼻炎薬「アレジオン20」の販促に力を入れていた。いつも頭を悩ませるのが、自社製品を店頭でいかに消費者の目に留まりやすい位置に置いてもらえるかだ。
西本さんは花粉症薬を手掛ける競合2社の担当者に売り場づくりを呼びかけた。3社の製品をまとめて、花粉症に悩む人が見つけやすい店の入り口付近などの棚を確保する。内服薬のアレジオンに対し、他の2社はそれぞれ点鼻薬と目薬を置く。同じコーナーでも3社の製品タイプが重複しないように調整した。通常のドラッグストアなら点鼻薬や目薬、内服薬はそれぞれ別々の売り場にあるが、一緒に並べることで併売効果など各社にメリットが生まれる。