苦手を隠さず助け求めよう 信念・執念は誰よりも強く
ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン 小林りん代表理事(下)

ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事 小林りん氏
長野県軽井沢町にある全寮制の国際高校ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)ISAKジャパンは、資金集めの時期にリーマン・ショックなどが起こり困難に直面したものの、多数の賛同者を得て開学にこぎつけた。代表理事の小林りんさんの強いリーダーシップによるものかと思ったが「私は弱さが売り物のリーダー。いろいろな人に助けられてここまで来られた」と語る。
――リーダーとして心がけていることは何ですか。
「弱さを認める強さを持つことです。私自身、数学は苦手だし書類作成も不得意。苦手なことは隠さず、周囲に助けてほしいと言います。結果としてみんなが自分はかけがえのないメンバーだと感じ、ステップアップしていきます」
「一方でリーダーはミッションへの信念と、そのクオリティーを保つ執念が誰よりも強くないといけない。弱さと強さを併せ持つ人こそが強いチーム経営をできると思います。加えて、自分たちがどこに向かっているのかを常に問うことも大切です」

ユニセフのフィリピン事務所ではストリートチルドレンの識字教育を担当した(後列の左から3番目が小林さん)
――部下の育成はどのようにしていますか。
「若い人に『俺の言ったことをやればいい』では通用しません。部下も不完全ではあるけれど、とりあえず任せます。失敗してもまずはありがとう、やってくれてありがとう。りんさんは『ごめんね』と『ありがとう』が本当に多いね、と言われます」
――リーダー像は自身の経験からでしょうか。
「大学卒業後に入社したモルガン・スタンレーでは1年目に不動産の不良債権処理を、2年目には新規株式公開(IPO)を担当しました。どの上司も任せるのがうまく、重要な交渉の場にも同席させてくれました」
「アナリストなのに数学が苦手で、表計算ソフトのエクセルもまともに使えませんでした。日本企業なら致命的ですが、インド系米国人の上司は『君が人を引き付ける力はすごい』とほめてくれました。別の上司は指導の『手綱の手放し方』が絶妙でした」
――電子商取引サイト運営のラクーンホールディングスへ、草創期に転職しましたね。
「若くても一層責任を持たせてくれる会社を選んだのです。転職した瞬間にIT(情報技術)バブルがはじけて3年間赤字でしたが、人生で一番勉強しました。十数人の社員は前職がパチンコ店のアルバイトなど、様々な経歴でしたが、みんないろいろな才能を持っている。今あるチームで戦うこと、人を名刺で判断しないことを学びました」