心に響いた松下幸之助とジョブズの言葉 ポピンズ会長
ポピンズホールディングス会長 中村紀子氏

なかむら・のりこ アナウンサーを経て85年、日本女性エグゼクティブ協会設立、代表就任。87年にポピンズの前身ジャフィサービス設立。18年より現職
元松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助さんの『商売心得帖』と『経営心得帖』を枕元に置き毎晩、寝る前に1、2ページずつ読み、言葉を頭に閉じ込める。それを10年間以上日課にしていました。やさしく語りかけるような口調で、とても読みやすいです。社会にとって本当に必要なものを作れば、その社会貢献の度合いに応じて利益がついてくるという。その考えはポピンズの経営に大きな影響を与えました。アナウンサー時代から松下さんのファンでした。大阪府門真市の工場(当時)を見学したとき、つえをつきながら玄関まで出迎えてくれた姿が忘れられません。
アップル創業者の伝記『スティーブ・ジョブズ』です。私は多読派ではなく、これだっと思った一冊を自分のものにするまで何度も繰り返し読むタイプ。松下さんの経営本も、この本もボロボロになるまで読み、現在、3冊目になります。特に印象に残っている言葉は「完璧を求める」「直感に従う」。社員が辞めようが、むちゃな注文を出し続けたそうです。周囲はさぞかし大変だったことでしょう。でも完璧を求めたからこそ、イノベーションを起こしました。自分の心と直感を信じて生きている人でした。
私も完璧主義であり、自分の直感を信じてきました。最高水準の保育サービスを届けるために、ささいなことも妥協できません。しかし長年、経営をしているなかで「完璧主義を貫く経営者や直感に従う経営はダメなのか」と迷いがでてきた時期がありました。この本のおかげで自分の経営方針に自信を持ち、前に進むことができました。
ジョブズは毎晩、鏡の前で「今日が人生最後の日だとしたら、これからやろうとしていることを本当にやりたいと思えるだろうか」と問いかけていました。この言葉からインスピレーションを受け、自分の生き方を言語化してみました。それが「人生は永遠のように夢を描き、今日終わってもいいように行動する」です。毎日のように自分に言い聞かせています。
社員にも悔いのない人生を送ってほしいので折に触れて、この言葉を伝えています。「今度、母親に会ったときに今まで私を育ててくれてありがとうと言おう」と話している社員に「待つのではなく、今日電話をかけて伝えなさい」と助言しています。