使命感持ち、時代を読む いつも勉強する資質が大事
インターネットイニシアティブ 勝栄二郎社長(上)

インターネットイニシアティブ社長 勝栄二郎氏
財務省の官僚トップの事務次官から、ネット関連サービス大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)の社長に転じた勝栄二郎さん(71)。消費増税を柱にした社会保障と税の一体改革など、国家の重要政策に携わり「最後の大物次官」とも呼ばれた。官民の両方で組織のトップを務めた経験から「リーダーは使命感を持ち、時代の流れを読む力が必要」と語る。
――リーダーの条件とは何でしょうか。
「まず使命感を持つことです。自ら目的を設定し、情熱を持って達成する力と言えばいいでしょうか。そのため、広い意味でいつも勉強するという資質が大事です。人と会って意見を聞いたり、本を読んだりして自分の考えを作っていくのです。絶えず目標を見直す謙虚な気持ちも必要です」
「目標達成のために何をすべきかをリーダーは考えなければいけません。戦争や戦(いくさ)の要諦であるロジスティックス(兵たん)が組織でも重要です。相手の動きを情報収集し、どれくらいの兵力や資金をつぎ込み、どの程度の資源をいつ使うのかなど、共通する点は多いですね」
――どういった存在がふさわしいのでしょうか。
「組織で一握りのリーダーが一番優れているわけではありません。組織はいろんな人がいて初めて成り立ちます。リーダーには志を共有できる仲間が必要です。元官房長官の青木幹雄さんが『3~4人の仲間が同じ思いでもり立ててくれれば天下を取れる』と話していたのを聞き、その通りだと思いました」

野田佳彦政権で勝氏は社会保障と税の一体改革の実現に取り組んだ(着席の右から2人目、2011年9月)
「リーダーは大家族の家長のような存在でもあります。組織で働く一人ひとりを守る。大げさに言えば愛する気持ちも大事ですね」
――理想のリーダーはいますか。
「特定の誰かというのはありません。歴史上の人物で面白いと思う人物は何人かいます。その一人が19世紀にフランスの皇帝だったナポレオンと戦ったロシアの皇帝アレクサンドル1世です。パリで諜報(ちょうほう)活動し、どのルートで侵攻してくるかを予測します。国王がナポレオンの親戚だったスウェーデンへの中立工作もしています」
「戦う前にこうした手を打つことで戦略的に抵抗せず、ロシアの奥深くまでフランス軍を引き込みます。モスクワは焼き打ちされ、国民は屈辱的だと反発しましたが、それにも耐えました。冬を迎えて撤退せざるを得なくなった時に反撃に出たのです。冬でも動ける馬を大量に育成し、兵器として使いました。用意周到に戦略と戦術を立てる人だと感心しました」