年功序列型の給与を見直し 人材の多様化で危機対応
インターネットイニシアティブ 勝栄二郎社長(下)

インターネットイニシアティブ社長 勝栄二郎氏
財務省の事務次官だった勝栄二郎さんがインターネットイニシアティブ(IIJ)の社長に就いて8年が過ぎた。畑違いのIT(情報技術)業界への転身は世間を驚かせた。IIJは新型コロナウイルス下のテレワーク需要から法人向けサービスが伸び2021年3月期の連結営業利益は142億円と過去最高となった。勝さんは「コロナ禍で加速した変化に対応するのがリーダーの仕事」と話す。
――官僚の世界からIT業界に転身し、戸惑いはなかったですか。
「違和感は全くありませんでした。IIJが財務省と似ていると思ったのは、自由闊達に意見が交わされているところでした。創業者で会長の鈴木幸一さんは、社員が新しいものを創出するために、社員に自由になってもらう必要があると考えているのではないか。そう思いました」
「財務省も自分がやりたいと思うことを企画し、挑戦します。役所は法律の執行機関ですが、同時に国会が決める前段階で、制度や仕組みをつくる役割を担っています。時代に合わせて見直すのが国民に対する奉仕という意味で、今の仕事と同じですね」
――次の仕事場としてIIJを選んだ理由を教えてください。
「退官後、次は違うことをやりたいと思っていました。金融や財政に関係する仕事は十分やりましたから。違う分野で仕事ができるご縁は多くないので、誘いを受けた時はうれしかったです。ただ、急に外からぽんときてうまくいくかは分かりませんよね。鈴木さんのような創業者がいたからこそできたと思います」
――社長として心がけていることは何かありますか。
「リーダーは、目的を組織のみんなと共有し、同じ方に向かっていくようにしなければなりません。新入社員にいつも伝えることがあります。入社すると人生の大半の時間をIIJで過ごすことになります。給与のために嫌々過ごすのか、それとも『仕事は面白い』『自分にしかできない』という自負を持って過ごすのか。その違いで、仕事の成果と人生が大きく変わるということです」
「IIJは1992年にできた日本初の商用インターネットサービスの会社です。経営理念ははっきりしていて、インターネットのインフラを支えるということです。もう一つは常に技術革新を起こし、社名の通りイニシアティブをとり続けるということです。インターネットという大きな枠があるので、目的を共有するのはそれほど難しいことではありません」