殺虫剤売れ行き、天候で見通す 店舗ごとにPOP自作も
アース製薬 原島理さん
重視するのは、取引先の「なぜ」に明快に答えることだ。例えばゴキブリ駆除なら、消費者になじみの深いスプレー缶「アースジェット」とともに、小容量の別商品を提案する。小容量だと首都圏の賃貸マンションなどで使いやすく、試し買いや購入頻度の増加で店舗売り上げにも貢献できると説明する。
天候や販売データをもとに害虫の発生状況などに見通しを立てることもポイントだ。例えば大雨が多かった21年の夏は「大雨が降れば虫や薬剤は流される。新しく害虫対策をし直す需要が生まれる」と判断し、暑さと雨天のタイミングを見て品ぞろえの更新を提案していった。原島さんは「商談に行くまでの準備がけっこう大変」としながら、売り場や来店客を思う姿勢が伝わると信じる。
MRとも手分けして交渉
営業活動を支える販売データや売り場の成功実例について、週1回は他の営業担当や医薬情報担当(MR)と情報を共有する。アース製薬の場合、MRが営業担当より店頭に足を運ぶ機会が多く、店舗スタッフと打ち解けた関係を築いている人もいる。店への提案をMR経由で店舗スタッフに伝えた方が話が早く進むこともある。

原島さんは営業課長として「各店の特徴や取引関係に沿ってどういうアプローチがよいか、メンバーでノウハウを持ち寄って方針を練れば、仕事の段取りや交渉がスムーズに進む」と部署内のチームワークにも目配りしている。
営業の成否は、取引先との人間関係が影響するケースも多い。原島さんは第一印象で話が合わなかったと感じる人と交渉する場合には、相手をいろいろな角度から観察して共通点や似た価値観を探していくよう心がける。
仕事と離れて映画やスポーツの話をはさんでみると、相手の知らなかった一面に気づくこともある。「やりづらいと感じても、こういうところは好きだから、と共通点などを探して印象を更新する」。商品の価値や取引条件だけではつかめない、売れる店づくりのポイントと考えて実行している。
(増田由貴)
09年にアース製薬入社。同年、仙台市の北日本支店営業課に配属。17年から首都圏営業統括部で営業課長。大手ドラッグストアや総合スーパーを担当する。