変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

このような傾向のある台地型の業界はどこかといえば、以下の3業界です。

医療、福祉業界は、皆保険の範ちゅうで売り上げが定められているので、そこから支払われる給与を引き上げることが難しい業界です。卸売や小売はデフレの影響が色濃く残っており、運輸業界の価格競争が厳しいことは周知の事実です。そう考えてみれば、これらの業界でピーク時年収を引き上げることが難しいことがわかります。

転職市場の拡大が「平地型」業界を拡げている

最後の「平地型」業界は就労者の13%しか占めていませんが、私たちが直接接する機会が最も多い業界でもあります。

平地型に属するのは以下の4業界で、一言で言えばサービス業です。

平地型業界では50代前半よりも早く、40代後半でピーク年収に到達します。そのまま50代前半までピークが維持され、50代後半で平均20万円ほどだけ年収が下がります。

しかしそのピーク年収は約530万円。台地型業界よりも160万円低く、右肩上がり業界に比べると約400万円も低い年収水準です

平地型の賃金カーブが生まれた原因はいくつか考えられますが、最も大きな要因は、労働市場の変化にあったのではないか、と考えられます。

もちろんデフレが進んで売り上げが下がったからその分だけ人件費も上がらなくなった、という事情もあるでしょう。根本要因はそうかもしれませんが、高い人件費を払えないけれどもそれでも働いてくれる人たちをたくさん求めた企業側のニーズと、非正規でもいいから/昇給がなくてもいいからとにかく働く場所が欲しいという働く側のニーズが合致して、昇給がほとんどない賃金カーブが生み出されてきたのではないかと考えられるわけです。

出世すればいずれの業界でも給与は増えるが……

賃金の統計データを見てみると、将来に夢を持てる業界とそうでない業界がはっきりとわかります。これらは大学の就職課や、各種職業紹介を行う会社にとってみればあまり公にしたくないデータかもしれません。なぜなら大学の就職課にしてみれば、とにかく就職できたかどうかという就職率が大事だから。各種職業紹介の会社にしても、まずは入社してもらわないことにはクライアント企業からお金をもらえません。そんなとき、「この業界は将来性がないからやめといた方がいい」と十把(じっぱ)一からげに指摘されてしまうと、元も子もありません。業界が厳しい状況だからといって、個々の会社で見れば優良な企業も多い。平均値で測る統計データは、風評被害をもたらしてしまうかもしれません。

とはいえ、統計からわかる事実もあるわけで、自衛のためにも自分自身で情報を集める必要があります。

もしこれから学校を卒業して就職をするとすれば、これらを参考にしながら就職活動をすることも良いでしょう。また、今平地型業界にいるのであれば、そこから台地型や山型、右肩上がり型の業界を目指して転職活動をすることも考えられます。

さらに言えば、どの業界であったとしても、管理職や役員への出世を果たすことができれば、これらの平均値の範囲からはずれた給与を受け取ることができるようになります。

だからこそ現在では、15年前よりもさらに出世が求められるわけです。

一方で、出世にはなかなか厳しい現実もあります。まだまだ多くの会社では、出世と自由とがバーター取引の関係にあるからです。出世したものの自由に使える時間はなくて、肉体的にも精神的にも追いつめられる、ということだってあります。

だとすれば、私たちはどんな出世を目指すべきでしょうか?

次回はそのあたりのヒントを考えてみましょう。

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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