「睡眠負債」をためない術 6時間では徹夜と同じ?
早稲田大学研究戦略センター教授 枝川義邦氏
テストの結果くらいならば、次の日に最適な睡眠をとれば翌日には盛り返せると思いきや、実は健康にも良くない影響がでてくるようです。詳しいメカニズムまでは分かっていませんが、死亡率を調べると、最も低かったのが6.5~7.5時間の睡眠時間。7.5~8.5時間だと約20%も多くなるとのことです。8時間以上の睡眠を取った場合は、心疾患のリスクが高まるのだそうです。
では、少し短めの6時間睡眠について、他の研究をみてみましょう。「1.5時間周期」を考えると、ちょうど4セット刻んだところなのでタイミング的にはよさそうですし、たしかに、目覚めがよい印象もあります。
しかし、6時間睡眠をしたときの脳波をとると「二晩徹夜」したのと同じだったという研究結果が米国から報告されました。4時間睡眠でも同様だったのですが、6時間も眠れば、本人は頭がスッキリしたように感じながらも、認知テストや脳波では徹夜明けと同じことになっている点でやっかいです。
このような短時間睡眠を続けて習慣になると、それが「睡眠負債」となって、脳や身体に悪い影響を及ぼしてしまうというのが、最近の睡眠科学の考えです。
パソコン・スマホは「眠りたくない」のと同じ
――6時間以上、睡眠するにはどう対処したらいいのでしょうか。寝つきを良くしたり、途中で目が覚めるのを解消するいい方法はありますか。
ベッドに入ってもうまく眠れない、という話をよく耳にします。妙に目が冴えて眠れないことも、たまにある程度ならば、なんら心配することはないでしょう。しかし、頻繁に眠れないとなると不眠症を疑いたくもなります。
「眠れない」とひとくちにいっても、寝付きが悪いのか、いちど寝ても少しすると目が覚めてしまうのか、長く眠っていられずに明け方に目が覚めてしまうのか、といくつかのパターンがみられます。
寝付きが悪くても、いちど眠ってしまえば朝まで眠り続けられるとなれば、就寝を習慣化するようにすれば、自然と快適な睡眠を取ることが出来るようになっていきます。生活習慣の中に睡眠(就寝)を組み入れれば、決まった時刻には自然と眠ることができるようになるものです。そのためには、眠りたいタイミングに向けての準備も習慣化する必要があります。
寝る直前までパソコンやスマートフォン(スマホ)を眺めているのは「眠りたくない」といっているのと同じことです。特にインターネットのページを見続けたりゲーム興じると、気持ちが高ぶるだけでなく、情報量も多いことから、脳が興奮状態になってしまいます。