書店にも"資生堂インパクト"~汐留の売れ筋本
リブロ汐留シオサイト店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は3回目のリブロ汐留シオサイト店だ。前回は駅チカの特徴が出て、電車の車内広告の反応が出ていた同店だが、今週はどんな動きになっているだろうか。
「比較的大きな動きがなくて、前から売れている本が売れる、ロングセラー頼りの週でした」。店長の大城優樹さんはこう振り返る。前々回の八重洲、前回の大手町と2週続けて目立った売れ行きを示した橋本卓典『捨てられる銀行』(講談社現代新書)は、ここではまったく反応がない。店全体の売り上げ上位50にも入ってこないほどだ。同書はとにかく"金融村"限定のベストセラーということのようだ。
近くに本社、『資生堂インパクト』が注目
そんな中で目立った売れ行きを示した新刊はないか聞いたところ、大城さんは石塚由紀夫『資生堂インパクト』(日本経済新聞出版社)をあげた。この本は資生堂の経営改革、働き方改革を女性問題を長年取材してきた記者が丹念な取材で浮かび上がらせた内容。その経営改革の一部は子育てしながら働く女性にとっては厳しい側面があり、昨年秋、NHKの報道をきっかけに、「資生堂ショック」という言葉でネットや雑誌メディアなどで大議論が沸き起こった。本書は女性が男性と肩を並べて働くために資生堂がどんな施策を行っているのかを具体的に書くことで、資生堂ショックの内実をもう一度冷静に問い直している。
資生堂の本社は汐留に立地する。このため同社の社員や関係者が買っていくらしい。同店では写真のように、メーンの平台に店頭販促(POP)を立てて陳列しているほか、レジ脇に日経本のワゴンを設けて、そこでも表紙を見せて並べるなどで来店客の目に触れやすくしている。
『ANAの本』も売れ筋
本社所在地が近いという意味では、やはり汐留地区に本社がある全日本空輸のファンブック的な内容の誠文堂新光社編『ANAの本』(誠文堂新光社)もよく売れており、同地区に本社がある大企業の関連本は、この書店では売れ筋の常連だ。
それでは先週のベストセラーを見ていこう。
1位に入ったのは川邊明『秘密のアキラさん』(サンライズパブリッシング)。ビジネス書とは思えないタイトルだが、著者は極貧生活から一念発起し、アジアでラーメンチェーンを展開し、成功を収めた。自身の生い立ちから職業遍歴を語り、その成功のカギを「自分を変える究極の45のルール」として提示している。4月の刊行だが、この週にまとめ買いが入ったという。
2位と5位は3週前にもベスト5に入った本。3位の『言ってはいけない』も前回の紀伊国屋大手町ビル店の新書ベスト5に登場した。確かに新味は薄い。そんな中で『資生堂インパクト』は4位に食い込んで存在感を示した。
(水柿武志)