実力より評価が低くなってしまう部下の「3つの体質」

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他者からの評価は気になるもの。特に、会社や上司からの評価は昇進・昇格、月給や賞与に響く重要なものです。
その評価に関し、部下は2種類に分けられます。ひとつは、評価されやすい部下、もう一つは評価されにくい部下。そして、評価されにくい部下の方が多いものです。
同じぐらいの実績を上げていても、一方は評価され、もう一方はあまり評価されない。評価されない人は、どこに問題があるのか、どうすればよいのかを考えてみましょう。

部下の中に「自分は正当に評価されていない」と陰で不満を言っている者がいることは知っています。そう言われるのは心外です。こちらは、きちんと評価しています。
評価が低くなるのは、理由があります。本人がそれを理解していなかったり、認めていなかったりするだけです。
例えば、「報連相」(報告・連絡・相談)がしっかりできない部下、受け身で積極性のない部下を高く評価することはできません。また、コミュニケーション面で、話が長く、何を言いたいのかよくわからない部下も、高く評価することはできません。
好き嫌いで言っているわけではありません。それらは仕事に影響するのです。
自己評価が甘い部下も評価できません。前期の振り返りの話し合いで「自分なりにがんばりました」と言う部下がいるのですが、何をどうがんばったのか、よくわかりません。
「正当に評価されていない」と言う前に、自分をもっと客観的に見つめてほしいものです。
【部下に求めること】
*評価が不当だと言う前に、客観的に自己評価してほしい
*報連相をしっかりやってほしい
*受け身ではなく、積極的に行動してほしい
*簡潔に話してほしい

僕は正当に評価されていないと思います。プライベートを犠牲にしてまで、残業や休日出勤をして、膨大な仕事を処理し、厳しい納期に間に合わせているのに、評価は低いままです。地道な努力を上司はきちんと見ていないんです。これでは報われません。
同僚の中には、アピールがうまいことで、評価されている者もいます。僕もアピールすれば評価が上がるのかもしれませんが、そんな見苦しいことはしたくありません。
もともと、僕の仕事は大変な割に、評価されにくいものです。損な仕事ばかりまわされて、貧乏くじですよ。また、上司からよく「話が長い」と言われますが、そういうことも評価に影響しているのかもしれません。結局、上司の好みで評価が決まるんです。もっと、仕事ぶりをきちんと評価してほしいです。
【上司に求めること】
*日々の地道な努力を認めて評価してほしい
*アピールに惑わされず客観的な評価をしてほしい
*評価されにくい仕事ばかりまわさないでほしい
*好みではなく、仕事を見て評価してほしい
きちんと評価していると言う上司、正当に評価されていないと言う部下のミゾは深そうです。埋めていきましょう。
「評価されていない」と感じれば、部下のモチベーションは下がります。そして、その原因が自分にあると考えることは少ないもの。そのままでは、事態は好転しないでしょう。
上司として、改善してほしい点はきちんと伝え、どうしてほしいのか、具体的に説明し、改善するよう指導する必要があります。特に、人事考課に影響することに関し、指導するのは管理職の責任です。
昨今の人事考課制度は、プロセスよりも成果を重んじる傾向がありますので、地道な努力を評価しにくいのは理解できます。ただ、地道な努力に対し、ねぎらいの言葉をかけるなど、きちんと見ていることは伝えたいものです。
また、評価されにくい仕事ばかりまわされると思っている部下も数多くいます。負荷の大きい仕事を与えるときは、「どうすれば、どう報われるのか」を伝える必要があります。
なお、評価制度については、会社から出ている文書を読むように促すだけでなく、期が変わるごとに、ポイントを説明するようにしましょう。
*改善してほしい点は具体的に伝え指導する
*日々の苦労にはねぎらいの言葉を
*仕事を与える際は、どうすればどう報われるのか明確にしておく
*期が変わるごとに、評価制度は説明する
評価されない人は、異動になり上司が変わっても、評価が上がらない場合が多いもの。つまり評価されない体質を持っているわけです。ここでは、典型的な評価されない体質を3つ挙げ、どうすればよいかを記します。
評価されない体質1 アピールしない
アピールは悪いことだと思っており、しない。その結果、仕事の成果が正しく伝わらず、たいしたことをやっていないと思われてしまう。黙々とやっていれば、誰かが見てくれるはずだと思っている。また、かいた汗の量が評価されるべきだと思っている。
対応策
1人のプレイングマネージャーが数多くの部下を抱える今日、上司が部下の行動を逐一見るのは不可能です。これみよがしのアピールは不要ですが、業務報告を通じ、挙げた成果をきちんと伝えることは必要です。かいた汗の量は評価されないと割り切り、成果を数字できちんと伝えましょう。
評価されない体質2 仕事環境に対して受け身
仕事は与えられるものと考え、振られてくる仕事をひたすらこなす。目の前の仕事で手いっぱいで、新しい仕事、革新的な取り組みに手を出せず、その状況を積極性が足りないと取られ、また割に合わない仕事を振られる。いわば、低評価スパイラルにはまった状態。
対応策
低評価スパイラルから脱出するために、「こういう仕事がしたい」「こういう取り組みをやってみたい」と自ら仕掛けていきましょう。発信することで仕事環境に対して働きかけます。改善提案や新たな取り組みを、企画案として文書で上司に提案していきましょう。そういう動きをすること自体が評価を上げます。
評価されない体質3 ビビりな話し方
手堅く、言質をとられないように慎重に話す。その話し方が、潔くないと思われ低評価につながってしまう。例えば、「難しいとは思いますが、できるだけ間に合うようにしたいと思います」といった話し方。
対応策
「間に合わせます」「やります」というように言い切りましょう。話し方は、簡単に改善でき、短期に印象、ひいては評価を変えられるポイントです。
「対応策」で挙げたことを、無意識にやっているのが評価される体質を持った人です。評価の分かれ目はこんなところにあります。
*業務報告を通じ、仕事の成果を数字できちんと伝える
*仕事環境に対して働きかける
*潔く言い切る
なお、「なぜか評価される人の仕事の習慣」という書籍で、低評価になってしまう人の行動と、なぜか評価される人の行動を比較し、評価されない人が、どうしたら評価されるようになっていけるのかを詳しく解説しています。
そちらも、参考にしていただければ幸いです。
[2013年掲載の日経Bizアカデミーの記事を再構成]

1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、住宅リフォーム会社に就職し、最年少支店長を経て、大手人材開発会社に転職。トップセールスマンとなり、営業マネージャー、経営企画室マネージャー、システムソリューション部門責任者を歴任後、独立。現在は、コンサルタントとして、公開セミナー、個別企業の研修に出講しており、これまで指導したビジネスパーソンは1万7000人を超える。
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