経営学で「人生をマネジメント」キャリア設計を考える
平井孝志 著 「売れる『じぶん』を作る」


平井孝志さん
本書の著者、平井孝志さんは東京大学大学院を修了後、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールMBA(経営学修士)を取得。米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー、米デル、米スターバックスなどを経て、現在はドイツを拠点とするコンサルティング会社、ローランド・ベルガーの執行役員シニアパートナーとして活躍しています。
企業の経営は、人生を考えることにつながる
「経営学」と聞いた時に、それを自分のキャリアに直接結び付ける人は、少ないのではないでしょうか。著者の平井さんは数々の企業を仕事で見ていく中で、「企業の経営と人生の経営はよく似ているな」と思うようになりました。「経営戦略やマーケティング戦略の考えを活用しながら、自分のキャリア設計を考えられる本を作りたい」という思いで書いたのが本書です。
個人にもきっと同じことがいえるでしょう。人生の主役は自分自身なのだから、自分自身を見つめ直し、自ら「あるべき姿」を決める覚悟と勇気が必要なのです。
(15ページ 第1章 「君は何をしたいのか」より)
夢を「なかったこと」にしないために
小学生や中学生のころ、「ノーベル賞をもらいたい」「総理大臣になりたい」といった大きな夢を持っていませんでしたか。しかし、大人になって現実の世界でもまれるうちに、そうした夢はいつのまにかどこかへいってしまったのではないでしょうか。平井さんは、「青春時代に比べ、世の中のことがよくわかっている今だからこそ、より大きな夢、より本質的な夢をもう一度描けると考えたほうがよい」と指摘します。
確かに企業に比べると、個人の「あるべき姿」は日常の忙しさの中で流されてしまっています。何のために働いているのか、自分がどこに向かっているのか、分からなくなることはありませんか。そんなときは、立ち止まって、自分の人生における戦略(ビジョン)を練り直してみてもよいかもしれません。
「とはいえ、どう戦略を練ったらよいのかわからない」という方にお勧めするのが「経営学」です。
(192ページ 第5章 「行動を続けるためのヒント」より)
「形」を使うことで時間を短縮
自分でゼロから考えるのではなく、既に多くの先人が議論し、考え抜いてきた「形」を使用することで、時間の短縮をはかることができます。例えば、「バランス・スコアカード」という考え方が経営学にあります。
この考え方を、例えば恋愛に当てはめてみましょう。「パートナーに振られた」といった現象があったときに、その背景に実は「経済力の不安視」「パートナーのことを考えた行動ができていなかった」「度重なる遅刻などの素行の問題」「努力をしないことに対し、成長性を感じられない」などの理由があるかもしれません。どれも、視点を1つに固定していては、得られなかったものです。
平井さんは「様々な現象に対する見方や解釈の切り口を豊富に提供してくれること」が経営学を学ぶ魅力であると語ります。結果として、それは同じ過ちを繰り返さずに、新たなチャンスを発見するためのヒントになってくれます。「経営」のおもしろさを身近に感じることができるようになる一冊です。
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自分のキャリア設計を考えるのと同時に、経営戦略やマーケティングの知識を学ぼう――。そんな「欲張り」な考えから本書は生まれました。
自己分析をするとき、「自分は何をしたいのか」「自分の強みは何か」って考えますよね。一方、会社の経営者は「うちの会社は何を中心にやっていくのか」「うちの会社の強みは」と考えます。そう、個人の人生設計と、会社経営は相当似たところがあるのです。
著者自身、現在コンサルタントにして、複数の会社で働いてきた経験の持ち主です。ビジネススキルについてはエキスパートであるのはもちろん、他の人以上にキャリアについて考えてきたのです。
経営の知識まで知っているとなると、会社で一目置かれること間違いなし。さあ、あなたも「一挙両得」を目指しましょう。
(雨宮百子)