待つ、待ってもらうとき 便利な英語表現は?
デイビッド・セイン(18)

不振のNK商社にテコ入れすべく、田中社長が下した決断は「コンサルタント」の雇用でした。外部コンサルタントではなく、常勤のコンサルタントです。社長のみならず、社員一同、期待値はどうしても上がらざるを得ません。しかし、当のリチャード、何やら、言動の揺らぎがあったり、今の時点では、信用に足る人物なのかどうか……。
今日も約束の時間に現れないリチャードを巡って「待つ」スタッフは色々意見を述べています。

イラスト Dセイン
Sally: Richard still isn't here? Everyone's waiting for him.
Ito: I haven't seen him. Maybe he's on his way.
Sally: But he's already 15 minutes late.
Ito: The least he could do is call and let us know when he's coming.
Sally: Yeah, right. Everyone's tired of waiting around for him.
Ito: Maybe something happened to him.
Sally: I can't believe he would keep everyone waiting.
Ito: I can. He's pretty loose with deadlines.
Sally: Yeah, you're right. But maybe he has some good advice for us.
Ito: Let's hope so.
【対訳】
サリー: リチャードはまだ来ていないの? 皆待っているのに。
伊藤: まだ見ていません。多分向かっている途中なのかも。
サリー: でも、もう15分も遅れているわよ。
伊藤: 少なくとも電話をかけて、いつ来るかぐらい教えることは当たり前のことですよね。
サリー: ええ、その通りね。 皆彼を待つのには飽き飽きしているわ。
伊藤: 多分何かあったんですよ。
サリー: 彼が皆を待たせるなんて信じられないわ。
伊藤: 僕は信じられますよ。彼は締め切りにはとってもルーズなんです。
サリー: ええ、あなたは正しいと思うわ。でも、我が社のためにおそらくいいアドバイスがあるんじゃないかしら。
伊藤: そうだといいですね。
解説)
▼ be on one's way: (目的地などへの) 途中にいる
*Maybe he's on his way.: 彼は多分(こちらへ/会社へ向かっている)途中なんでしょう。
▼ The least he could do is…: 少なくとも彼ができることは~/せめても彼ができることは~
* 「~することくらい当たり前のこと」というニュアンス。
* least はlittle の最上級
▼ tired of…ing: ~することにうんざりして/あきあきして
▼ wait around for…: ~をイライラしながら待つ
▼ loose with…: ~にルーズである/忠実でない
▼ Let's hope so.: (自分だけではなく)皆もそう思っていましょうよ/そう願っていましょうよ。
* 強い願望というよりも、むしろ「無理かもしれないけど、でも…」のニュアンスがあります。
Mariko: Well...we've been waiting for Richard for 30 minutes.
Tanaka: Why don't you call him and see if he's coming?
Mariko: Hello, Richard. This is Mariko. Weren't you supposed to be here at 10:00 today.
Richard: Yeah, I'm on the road now.
Mariko: Okay, please hurry. We can't wait much longer.
...
Mariko: Richard, it's about time.
Richard: Well...um...I was busy. ,
Mariko: The least you could do is apologize!
Richard: Oh, yeah. Sorry for being late. My alarm clock didn't go off.
Tanaka: Okay, let's get started. We're looking forward to hearing your suggestions.
Richard: Suggestions?
Mariko: Yeah, we're expecting your first presentation today.
Richard: Oh, yeah.
【対訳】
まり子: さてと…もう30分もリチャードを待っています。
社長: 彼に電話をして、来るのかどうか確かめたらどうだろうか?
まり子: もしもし、リチャード。まり子ですけど、10時にここへ来ることになっていなかったかしら?
リチャード: はい、今そちらへ向かっています。
まり子: 分かったわ。もうこれ以上待てませんからね。
……
まり子: リチャード、そろそろ時間よ。
リチャード: その… 忙しかったので。
まり子: まず謝るのが当然よね。
リチャード: ああ、そうでした。遅れて来てすみませんでした。目覚ましが鳴らなかったんです。
社長: 分かった。それでは始めよう。我々は皆、君の提案を聞くのを楽しみにしているんだ。
リチャード: 提案?
まり子: そうよ。今日、あなたの初めてのプレゼンを待っているところよ。
リチャード: ああ、そうでしたね。
解説)
▼ Why don't you…? : 「なぜ~しないのか」すなわち「~したらどうだろうか」という提案になります。
▼ see if…: ~かどうか確かめる
▼ be supposed to…:~することになっている/~するはずである
▼ It's about time.: 「そろそろ時間だ」には、「本来なら、もっと早くしているはずだ」という気持ちが込められています。
▼ I'm on the road.: 現在そちらに向かう途中です。
▼ My alarm clock didn't go off.: 目覚まし時計が鳴らなかった。
*go off: 警報装置などが鳴り出す/作動する
▼ We're expecting your first presentation today.: 私たちはあなたの初めてのプレゼンを待っているところよ。
*be expecting は「期待する」よりもむしろ「~を待っている」の意味。
▼ Oh, yeah.: 場面ごとに色々な意味合いを持ちますが、この場合は「ああ、そうでしたね」というニュアンス。
セインのビジネスひと口メモ
日本の公共交通の時間の正確さは、日本を訪れる外国人の驚きのひとつです。もちろんそれは「嬉しい驚き」に他なりませんが、この交通システムが規則正しく運営されているのも、技術の問題だけではなく、日本人が持つ「時間」に対する概念によるものでしょう。日本人は約束の時間についても非常に厳格punctualです。しかし、他の国や文化が必ずしもそうであるとは限りません。ビジネスをする上ではそこを理解しておく必要もあります。
しかし、そんな日本人であっても、自分ではどうすることもできない事情によって遅刻してしまうこともあります。The least you can do is to apologize. 「まずはせめて謝りましょう」。
もちろん遅刻には色々な理由があります。自分のミスであったり、不可抗力であったり。
理由を言うのか言わないのかは判断の分れるところですが、それほど正当な理由でなければ特に言う必要はないかもしれません。
最悪なのは「嘘」がバレることです。相手の信用を失うという大きなしっぺ返しが待っています。
Hang in there!
:D セイン

米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。