英語できちんとノーと言うには?
デイビッド・セイン(20)

やっぱり怪しいリチャード。会社を改善させるべく雇われた顧問コンサルタントのリチャードは、何ら成果を上げることもなく、その努力すら見せてはいません。それどころか社員ひとりひとりにコンタクトを取り始めます。若い伊藤くんには転職をすすめ、そして女性のサリーには……?
この世の中には様々な誘いや誘惑があります。あなたはきちんとNo. が言えますか?

イラスト Dセイン
Ito: Thank for inviting me to lunch.
Richard: Sure thing. I've been watching you, and you have a lot of potential.
Ito: Thanks. That's really kind of you.
Richard: I was wondering, why don't you quit NK Trading and come work for me?
Ito: What?! But I just started here a few months ago.
Richard: I know, but you're wasting your time here.
Ito: I appreciate the offer, but I'll have to decline.
Richard: Don't rush to make a decision. Just think about it.
Ito: I don't have to think about it. I've already made up my mind.
Richard: You might not get a second chance.
Ito: I'm not worried, but aren't you trying to save this company, not stealing its employees?
Richard: Well, yeah, but….
Ito: Do you really think I'm wasting my time here?
Richard: I'll take the fifth.
【対訳】
伊藤: ランチに招待してくださってありがとうございます。
リチャード: もちろんだよ。君をずっと見ていたけど、君には多くの可能性があるね。
伊藤: ありがとうございます。ご親切にありがとうございます。
リチャード: ちょっと考えているんだけど、NK商社を辞めて、私のところで働いたらどうだろうか。
伊藤: 何ですって?! でも僕は数カ月前にここで働き始めたばかりですよ。
リチャード: 分かっているよ。でも君は自分の時間をここで無駄にしているよ。
伊藤: 申し出には感謝していますが、お断りしなければなりません。
リチャード: 急いで結論を出す必要はないよ。考えておいてくれ。
伊藤: 考える必要はありません。すでに気持ちは決まっています。
リチャード: 2度目のチャンスはないかもしれないよ。
伊藤: 心配はしていません。でも、あなたはこの会社を救おうとしているんではないですか?それとも従業員を盗もうとしているんですか?
リチャード: ええと、まあ、でも……
伊藤: あなたは僕がこの会社で時間を無駄にしていると思いますか?
リチャード: ノーコメントだ。
解説)
▼ Sure thing.: 当たり前だ/お安い御用だ
*人にお礼を言われてその返答として使われます。
*「~してくれる?」などと聞かれたときの「もちろん」もSure thing. で答えられます。
▼ I was wondering.: ちょっと考えているんだけど/思案中なんだけど
* I was wondering. のように過去にすることで「丁寧さ」が出ます。
▼ Why don't you…?: 「なぜ~しないのですか?」すなわち「~したらどうですか?」という「提案」あるいは「誘い」を表すフレーズになります。
▼ rush to…: 急いで~する
▼ You might not get a second chance.: 二度とチャンスはないかもしれないよ。
*mightは「~かもしれない」という推測を表す助動詞。may よりは可能性が低いとも言われていますが、may = might と考える人もいます。
▼ I'll take the fifth.: ノーコメント/黙秘権を行使する
*the fifth: The fifth amendment 米憲法の修正第5条:黙秘権などを認めた修正条項。
I'll take the fifth. で「ノーコメント/黙秘権を行使します」の意味になります。
Richard: Sally, how about going for a drink after work?
Sally: Sorry, I have something to do tonight.
Richard: Really?
Sally: Sorry. You're a nice guy, but you're not my type.
Richard: But you don't even know me. How can you say no?
Sally: I like men who are good at their job. And I'm not so sure about you.
Richard: Look, I have two front-row tickets to the Mariah Carey concert.
Sally: That is tempting, but it's not going to happen.
Richard: Come on! I promise it'll be fun.
Sally: No, and no means no.
Richard: After the concert, I'll take you to dinner at the nicest French restaurant in town.
Sally: Look, I'm just not interested.
Richard: Please….
Sally: This conversation is over. Period.
【対訳】
リチャード: サリー、仕事の後、一杯どう?
サリー: ごめんなさい。今夜はちょっと用事があるの。
リチャード: 本当に?
サリー: ごめんなさい。あなたはいい人だけど、私のタイプじゃないわ。
リチャード: でも君は僕を知ってさえいないじゃないか。どうしてノーと言えるんだい?
サリー: 私は仕事に熱心な男性が好きなの。あなたがそうだとは思えないもの。
リチャード: ほら、マライア・キャリーのコンサートの最前列のチケットがあるんだ。
サリー: それは魅力を感じるけど、でもそれはないわ。
リチャード: 頼むよ! 楽しいって約束するよ。
サリー: ないと言ったらない。絶対にない。
リチャード: コンサートが終わったら、街で一番素敵なフレンチレストランでの夕食に招待するよ。
サリー: どうしても興味がわかないの。
リチャード: 頼むよ……
サリー: もう、この話は終わり。おしまい。
解説)
▼ go for a drink after work: 仕事帰りに一杯飲む
* 同僚や友人などへの気楽な誘いのひと言
▼ have something to do: 「しなければならないことがある」すなわち「用事がある」
*「飲みに行かない?」と誘われて、何となく断りたいときに便利に使える表現です。
理由を言いたくないという場合にもピッタリです。
▼ You're not my type.: タイプじゃないわ
*日本語そのままの「タイプ」。
▼ It's not going to happen.: 「それは起こらない」すなわち「それはないなあ/そうはいかない/そうはならない」
▼ No, and no means no.: 断ってもしつこく誘ってくる人に対するしっかりとした断りのことば。
*No means no. は「ダメだったら、ダメ/ダメって言ったでしょ!」
▼ I'm just not interested.: 「ただ興味がないの」すなわち「どうしても興味が湧かないの」のニュアンス。
▼ Period.: 以上/おしまい
* 会話で使われるPeriod. は、「もうそれ以上は話したくない/終わらせたい」ことを強調しています。もちろん年上の人などに使うにはふさわしくありません。
セインのビジネスひと口メモ
日本では、丁重に断れば、相手はその気持ちを察し、それ以上煩わさないようにします。しかし、日本以外の国では断られても、さらににプッシュしようとする人たちもいます。どのような状況においても最良の断り方は丁寧でありながら、断固とした態度です。理由を言わないことはいいことではありません。しかし、たとえ理由を言っても腕のいいセールスマンは様々な情報を加えていくことによって、相手がYes. と言うまでさらにプッシュしてくるでしょう。そんなときにはきちんと断りの言葉を言うことが大切です。
I'm afraid the answer is no.「残念ですが、答えはノーです」
I'll have to decline. 「お断りせざるをえません」
Sorry, but no thank you. 「ありがとうございます。でも結構です」
Keep on going!
:D セイン

米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。