変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

――他国のプロレス業界はどうなのでしょうか。

「新日本プロレスは規模としては世界2位、アジア1位ですが、世界一の米国のプロレス興行会社、WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)に比べたら25分の1です。1位と2位のシェアがここまで離れているケースも珍しいでしょう。私は、米国と日本の規模を比較しても、新日本プロレスの売り上げは100億円まではいけると考えています。WWEもメディア収入が多いし、月額10ドルの配信サービスに150万人の会員がいます。我々もテレビ朝日と月額999円の配信サービス『新日本プロレスワールド』をやってますが、まだ会員は4万人です。とはいえ、専門チャンネルできちんと課金できている例が少ないなかで、好調だと思います。第2のファンクラブみたいなものですね」

今度はキックボクシングで『細マッチョ』好き女性ファン開拓

――新日本プロレスなどスポーツビジネスは、今後どのように展開していきますか。

「12月5日、新たにキックボクシングの団体を立ち上げます。理由は2つあります。まず1つは、UFCやWWEと違い、キックボクシングには小さな団体が乱立しており、世界的な上位概念がないのです。理論的には世界一を作れる可能性があります。もう1つは、女性です。プロレスも、最近『プ女子』と呼ばれる女性ファンが増えているものの、プロレスは『太マッチョ』です。世の中の女性の需要は『細マッチョ』が多いですよね。キックボクシングは細マッチョなので、女性ファン獲得も狙います」

スポーツコンテンツはこれから一段の価値向上が期待されている。

スポーツコンテンツはこれから一段の価値向上が期待されている。

「私は、スポーツコンテンツの価値はこれからも上がっていくと考えています。これから人工知能(AI)が入り、仕事のなかで多くを占める作業的な部分は、AIが肩代わりしてくれるようになるでしょう。労働時間が短くなり、スポーツやエンタメを楽しむ時間が増えると思っています。日本でゲームやアニメは飽和状態ですが、スポーツは米国と比べてもまだまだ伸びしろがあります。日本で一番売り上げの大きなスポーツ団体はプロ野球の阪神タイガースですが、それでも300億円程度ではないでしょうか。メジャーリーグなら1000億円規模の会社もあるのです」

「日本のスポーツビジネスがよくないのは、『――道』がつくところです。ビジネスを汚いと思ってしまうところがある。プロ野球でさえ、親会社はあくまでスポンサーという感覚です。だいぶ変わってきていますが、赤字を補填するところだと思う節がある。またプロレスラーを志す人も、現在はプロレスを好きな人が多いです。しかし、私は俳優になりたいからとか、お金持ちになりたいからプロレスラーになる、という思考があってもいいと思います。その方が多種多様な人材が入るからです」

「新日本プロレス所属のレスラー、オカダ・カズチカは高級車フェラーリを買いました。彼の今の年俸では買えません。なぜ買ったのか。彼は『フェラーリで会場に乗り付ける自分を見て、後から続く人に夢を追ってほしいからだ』というのです。プロレスラーで人気が出たらフェラーリに乗れる、というわかりやすい夢です。彼の年収は実際これからも上がっていくし、CMなどのオファーも増えています。彼は非常にしっかりしていると思います」

木谷高明氏(きだに・たかあき)
1960年石川県生まれ。武蔵大経済学部卒。山一証券勤務後、1社創業を経て2007年ブシロードを設立。12年に新日本プロレスリングを子会社化。シンガポール在住。

(松本千恵 代慶達也)

「トップは逆境を超えて」は随時掲載です。

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