英語でお祝いをするとき、気のきいた表現は?
デイビッド・セイン(26)

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NK商社の新入社員の伊藤君、最初は頼りなく、若者にありがちな失敗を繰り返しながらも、他のスタッフと共に一生懸命仕事をしてきました。その努力を皆、きちんと見ていたようです。
まり子部長、今日は何かビッグニュースがありそうです。伊藤君の将来は、そしてNK商社の未来は輝くのでしょうか?

イラスト Dセイン
Mariko: I heard the good news!
Ito: What good news?
Mariko: Congratulations!
Ito: Congratulations for what?
Mariko: Oh, maybe I jumped the gun. Didn't Tanaka-san talk to you yesterday?
Ito: No, I was out doing sales all day.
Mariko: Well, I better keep my mouth closed.
Ito: Come on! Now you have to tell me.
Mariko: Well, Tanaka-san said that he's going to make you the Manager of the new Global Development Department.
Ito: Wow! That would be great!
Mariko: You deserve it. You've done yeoman's work.
Ito: Everyone has been working hard to save the company.
Mariko: Thanks to you, the future is starting to look bright.
【対訳】
まり子: いいニュースを聞いたわよ!
伊藤: どんないいニュースですか?
まり子: おめでとう!
伊藤: 何に対してのおめでとうですか?
まり子: あ、ちょっとフライングだったわね。昨日、社長はあなたに話をしたかしら?
伊藤: いいえ私は、昨日は1日外回りをしていました。
まり子: じゃあ、黙っていた方がいいかもね。
伊藤: 頼みますよ! 話してくれなくちゃ。
まり子: 社長があなたを新しい国際開発部のマネージャーにするつもりだと言っていわたよ。
伊藤: わあ、それはすごいなあ。
まり子: あなたは相応しいわ。あなたはずっと大変な仕事をしていたもの。
伊藤: 皆会社のために一生懸命仕事をしていましたよ。
まり子: あなたのおかげで、未来は明るく輝き始めたわ。
解説)
▼ Congratulations!: おめでとう。
*必ず「複数」に。
▼ jump the gun: 焦る/フライングする
*陸上競技などで合図のピストルより早く飛び出すこと。すなわち「フライングする/焦る」
▼ out doing sales: 外回り
▼ Come on!: 頼みますよ!早く言ってくださいよ!
*Come on!: ネイティブの会話ではよく使われる言い回し。状況によっていくつかの意味があり、なかなか言わない/しない人の背中を押すように「頼むよ/早くやってよ」がこの場面でのCome on! になります。他にも「おい、冗談はよしてよ」「早く来てよ/急いでよ」などの意味があります。
▼ That would be great.: (本当なら)すごい。
▼ You deserve it.: あなたはそれに値する、すなわち「あなたはそれに相応しい」
*努力が報われた人へのひと言などにピッタリです。また「自業自得だ」のようなネガティブな意味もあります。
▼ You've done yeoman's work.: あなたはずっと大変な仕事をしていました。
*yeoman: 召使い/下士官の意味で、yeoman's work は「労力のかかる仕事/大変な仕事の意味。
Tanaka: Is Ito-kun here?
Ito: Yes, is there something…?
Tanaka: Could you get the Bluesky Motors file for me?
Ito: Sure, here you are. … Is there anything else?
Tanaka: No. I don't think so.
Ito: Okay, if you need to talk to me, I'll be at my desk.
Tanaka: Oh, there is one thing. As you know, we're setting up a Global Development Department, and I'd like you to be the Manager.
Ito: Me?! I didn't see this coming. It's like a bolt out of the blue.
Tanaka: You've shown me that you're up to the job. You're a born leader.
Ito: Thanks for your trust. I won't let you down.
Tanaka: Congratulations. You're the youngest manager in the company.
Ito: It's a big honor for me. I'll give it my all.
【対訳】
社長: 伊藤君はいる?
伊藤: 何かご用ですか?
社長: ブルースカイ・モーターズのファイルを持って来てくれるかな?
伊藤: はい、こちらです。…(えーと)他に何かありますか?
社長: いいや、何も。
伊藤: そうですか。何か私にお話があれば、私は自分の席にいます。
社長: ああ、ひとつだけあった。君も知っての通り、我々は国際開発部門を立ち上げるんだ。それで君にマネージャーになってもらいたいと思っている。
伊藤: 私ですか? それは思ってもみませんでした。晴天の霹靂です。
社長: 君はこの任務に耐えられるよ。生まれながらのリーダーだ。
伊藤: 信頼してくださってありがとうございます。決して失望させるようなことはしません。
社長: おめでとう。君は我が社の最も若いマネージャーだ。
伊藤: 大変名誉なことです。全力を尽くします。
解説)
▼ I didn't see this coming. : それは思ってもみませんでした。
*「これが来るとは分からなかった」すなわち「予想外のことだ/思ってもなかった」の意味。
▼ It's like a bolt out of the blue.: 晴天の霹靂だ。
*boltには「ネジ」の意味もありますが、この場合は「稲妻」の意味です。a bolt out of the blue は「空からの稲妻」。すなわち「突然/晴天の霹靂」の意味になります。
▼ You're up to the job: その任務に耐えうる/その任務に向く
▼ a born leader: 生まれながらのリーダー
▼ I won't let you down.: あなたを失望させない。
* I won't disappoint you. と置き換えることもできます。何か大きな仕事を任されたときに、相手を安心させ、自分の決意を示せるひと言になります。
▼ I'll give it my all.: 全力を尽くします。
セインのビジネスひと口メモ
アメリカなどの国では仕事を任せる場合は、その人の年齢や経験よりもリーダーに相応しい人を選ぶのが一般的です。年配の人よりもむしろ若い人たちがマネージャー職に選ばれることもよくあります。
一方、アメリカの組織は簡単に変わります。日本の組織では昇進することはありますが、降格人事はめったにありません。アメリカでは、組織とは常に変わり行くものです。今日あなたの部下であったり、下の地位にいた人が、明日にはあなたの上司になっているかもしれません。だからこそ、会社にいるすべての人とよい人間関係を築き、上下関係のみに心を奪われないことが大切です。
Never give up!
:D セイン

米国出身。累計売り上げ部数350万部の著作を刊行してきた英語本のベストセラー著者。英会話学校経営、翻訳、英語書籍・教材制作などを行うクリエーター集団「エートゥーゼット」(www.smartenglish.co.jp)の代表を務める。日本で26年以上の豊富な英語教授経験を持ち、これまでに教えた日本人は数万人にのぼる。日本人に合った日本人のための英語マスター術を多数開発している。
東京・文京区のエートゥーゼット英語学校の校長を務めるとともに、英会話教育メソッド「デイビッド・セイン英語ジム」(http://www.david-thayne.com)の監修も行っている。主な著書に、「チームリーダーの英語表現」(日本経済新聞出版社)、「ネイティブが教える英語の語法とライティング」(研究社)などがある。