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それでも「テレビはお茶の間の王様だ」「液晶で世界シェアNo.1を取る」という掛け声は微動だにしなかった。一貫生産をしていなかったブラウン管テレビの時代に部品メーカーから供給を止められて苦汁をなめた体験や、プラズマに勝つのだというデバイスメーカーとしての執念、液晶テレビで世界シェア10%近くまで到達した成功体験、シャープというブランドを付けた商品で10兆円、20兆円を達成したいという野望、そして「キングギドラ経営」といわれた会長ほかトップ3によるかじ取りの混乱――。

マーケットの声に耳を傾け、誠実・堅実に、どこにもないものを創り出すシャープのDNAは、すべての悪条件が重なって消失してしまっていた。

2000年代前半には、ザウルスを右手に持ち、シャープに敬意を表しながら、積極的なアプローチのあった海外有名企業トップからの提案にも耳を傾けなかった。シャープというロゴが付かないものをつくることは下請けだ、という思想。ファブレス(工場なし)というモノづくりも、ハードデバイスではなくソフトやエクスペリエンスを売ろうとしていたアップルの本質も、当時のシャープにはまったく見えていなかった。

●経営者が裸の王様になっていくこと

●追従する取り巻きがそれを加速させること

●強烈な欲望やトラウマがマーケットや顧客を見る目をふさいでしまうこと

●手段の目的化が暴走していくこと

会社が変貌していくリスクは、シャープに限らず、どんな会社にも起こりうるとSさんはいう。

自分で考え、自分で動き、自分でやりきる習慣が、最後は自分を育てる

シャープという会社に人生を懸け、夢のような成長と顧客満足の実現を果たしながら、正反対の体験もしてきたSさんが、30代・40代のビジネスパーソンに伝えておきたいメッセージとは何か? 今だからこそいえる「会社と個人のあるべき向き合い方」をこう語る。

「『本当にそれでいいのか?を3回繰り返せ。なぜそう考えるのか、どう動くべきなのか、自分自身を疑って徹底的に答えを出せ』。経営企画に配属された時代から、これが常にトップから言われ続けていた言葉です。これは今でも、どんな仕事をする上でも生きる言葉だと思っています。上司に言われたからでもなく、会社の方針に合わせてというわけでもなく、あくまで顧客を見て、マーケットに受け入れられるものづくりを最優先に考えていくということです。会社の中で働くみなさんに、ぜひこうした習慣を身に付けておいていただきたいと思っています」

2つめに伝えたいことは、「視野を広く、時間軸を長く、思考を深く持ち続けること」だとSさんは語る。「会社の中にいると、特に経営方針が健全でなくなった時は、さらに社内政治や思惑に絡められてしまいがちになる。必ず好奇心を持って、マーケットを見続けることで、会社の状態に影響されずに自分なりの尺度を持ち続けられる」。会社に左右されない平衡感覚が、自分自身のぶれない軸となり、自らを育てることになるというメッセージだ。

「そしてもう一つ重要なのが、自分の人脈を大切にすること。転職活動をしてみてわかりましたが、最初はただ、自分の職務経歴を書き並べているだけだった。それがわかったことも大きな学びになりました。経歴の裏側にある、多様な人との関係が、最後の最後は自分の道を切り開く助けになることを学びました」

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は11月11日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長
黒田 真行(くろだ・まさゆき)
ルーセントドアーズ代表取締役
「ミドル世代の方々のキャリアの可能性を最大化する」をテーマに、日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営している。1989年、関西大学法学部卒業、リクルート入社。1988年より転職メディアの制作・編集・事業企画に携わる。2006年~2013年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。13年リクルートドクターズキャリア取締役などを経て、2014年ルーセントドアーズを設立。
35歳以上の転職支援サービス「Career Release40」
http://lucentdoors.co.jp/cr40/

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