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ゴーン氏「3つの信念」

――ゴーンさんのビジネスリーダーとしての信念を3つあげると何でしょうか。

「単純です。1つ目は『解決のない問題はない』ということです。みんな嘘だろうといいますが、もしあなたがトップエグゼクティブなら、ただ問題を指摘するだけでは失格です。そんな人は子供と同じですよ。トップなら、『これが問題です、私の考え方は――』と、続けて対応策を示さなければなりません。これは基本ですが、多くのリーダーが実際はできていません。問題点をただ指摘すればいいと思っています。しかし、解決策を出す、これが1つ目です」

「2つ目は『危機はチャンス』ということです。これは本当です。多くの管理職は、好調なときを『今がチャンスだ』というでしょう。間違いですよ。危機のときこそ、付加価値が生み出せるし、上昇することができます」

「3つ目は『危険があるところに勝利がある』ということです。山の頂上に到着して、そこでリラックスしていると問題が起きます。一方で、山の裾野から頂上を目指しているときは、自分の努力だけが頼りです。ある組織に入ったら、強いところも弱いところも見なければいけません。そして、弱い部分を変える。これが私の3つの信念です」

――ゴーンさんが03年に中国の自動車メーカーに投資した際、不安要素も多かったと思います。しかし、当初の予定より大幅に増額しました。なぜですか。

「まず中国の自動車市場は非常に大きな成長を果たすと思いました。人口も多く国も大きい。中国は共産主義ですが、別の見方をすると、最も資本主義的な国です。世界中に中国人の実業家がいます。様々なアングルから見て、中国に経済のパワーがあることは事実でした。投資を踏み切った当時の中国の新車市場は200万台程度の需要しかありませんでしたが、ぜいたくが好きで、お金も大好きな人たちがたくさんいました。いずれ中国はブームがくると考えました。結果、もっと早いタイミングで中国経済が伸びたので、私たちは大きな利益を得ることができました」

名著「アルケミスト」も最初は売れず

「リーダーはその信念に柔軟性を持ちつつも、固執しなければなりません。最初、周りから理解を得られなくても、時間がたてばわかります。世界的ベストセラーになったブラジル人作家、パウロ・コエーリョの名著『アルケミスト』は1カ月で1冊しか売れず、1年たってもうまくいかず、編集者に『これはダメだ』といわれたそうです。しかし、作者は売れると信じていた。今や世界中で読まれるベストセラーになりました。人生のなかで最も大切なことは、簡単にはいかないのです。皆になかなか認められない。私が07年に『EVの生産を決める』と話したときも批判されて大変でした。しかし、見てください。今、独フォルクスワーゲン(VW)など世界の自動車大手は競ってEVの開発・生産をやっています。信念はかたくなに、そして実行するときは柔軟に動くことが肝要です」

(松本千恵 代慶達也)

(下)「ゴーンの法則」 人材育成阻む日本の文化 >>

「リーダーのマネジメント論」は原則火曜日に掲載します。

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