「ゴーンの法則」 人材育成阻む日本の文化
日産自動車社長 カルロス・ゴーン氏(下)

日産自動車のカルロス・ゴーン社長
日産自動車のカルロス・ゴーン社長が、社内外の若手幹部候補生30人と議論する「ゴーン・スクール」。日本人が苦手とする、ときに相手を傷つけかねない厳しいアドバイスは、マネジメントに求められる能力だという。「ゴーン先生」が考える、部下を成長させるための人材育成術とは――。
「ゴーン流」人事評価とは
――階層組織の構成員に関する社会学の法則「ピーターの法則」では、「人間はどこかの段階で能力の壁にぶつかる」とされます。ゴーンさんに限界があるとは思えないのですが。
「限界に達したことを自分で分かる人はいません。だからこそ、第三者的な評価、すなわち人事考課が重要なのです。そして、唯一の真実は、『パフォーマンス』は嘘をつかない、ということです。マネージャーのなかには、『相手を傷つけたくないから』もしくは、『彼女が好きだからよくいおう』という人がいます。真実をいわなかったり、甘いメッセージをいったり。しかし、それは間違っていますよ。痛みがあるから、患部を見つけられるのです」
「マネジメントは、その当人を助けるためのものです。アルコールを飲んで痛みをごまかしても、根源的な課題がなくなったわけではありません。これでは、問題解決になりません。『我々は同じ会社の一員だから悪いところを改善してほしい』と伝えなければならないのです。問題があるのは当たり前なのです。重要なことは、彼や彼女に成功してもらうために、つまり建設的に指摘することです」
「相手をいい気分にさせても、その人は何も学べません。傷つくけれど学んでもらい、『次回はもっと頑張ろう』と部下に思ってもらう。これこそマネジメントの神髄です。若い人がトップに行くためには、そういった自分の欠点を直視し、学ばなければ成長できませんよ」