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ソフトバンクグループ社長の孫正義氏は人工知能(AI)や、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」分野への投資を加速させる。米携帯電話大手のスプリントを傘下に持つが、米大統領選の結果は「直接影響しない」とあまり関心を示さない。一方でサウジアラビア政府系の公共投資ファンド(PIF)と共同で設立する10兆円規模の投資ファンドを活用し、AIやIoT分野への巨額買収に乗り出す意志を改めて強調した。

誰が米大統領になろうと…

「ヒラリーさんに(スプリント最高経営責任者の)マルセロは近いらしいけど、誰が米大統領になろうと、直接の影響はないね」。ソフトバンクグループが7日に開いた決算記者会見の後、孫氏に大統領選について聞くと、ニヤッと笑ってこう答えた。

世界が注目する大統領選もどこ吹く風という体だが、以前の孫氏であれば、興味津々だったはずだ。孫氏は米携帯電話3位だったスプリントと同4位のTモバイルUSとの統合を画策したが、2014年夏に統合交渉が頓挫した。背景には米当局が再編を阻止しようとしたためとされる。

米国では政権が変われば、再編方針も変わる可能性がある。であるなら、大統領選の行方が気になってもおかしくないはずだが、そうでもない。今の孫氏は携帯電話事業の再編への関心がかなり薄れているようにみえる。

2045年、AIが人類を超える前に

孫氏が夢中になっているのは「シンギュラリティー」。AIが人類の知能を超える「技術的特異点」という意味だ。その日は2045年に訪れるとされる。孫氏は「その前に様々な変革が起こり、ビジネスチャンスが生まれる」と断言する。その第1弾として3兆3000億円で買収したのが英半導体設計大手アーム・ホールディングスだ。今後もシンギュラリティー銘柄の有力企業を次々買収し、「AIやIoT関連の巨大な企業連合をつくる」と豪語する。

孫氏はAIが人類の知性を超える「シンギュラリティー」に夢中という

孫氏はAIが人類の知性を超える「シンギュラリティー」に夢中という

これを孫氏の変節と捉える人もいる。06年に英ボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に参入した際、孫氏は「10年以内にNTTドコモを抜く」と公言、さらに米スプリントを買収後は「世界一を目指す」と語り、海外の携帯電話会社を次々買収する姿勢を示した。だが、ソフトバンク幹部によると「キャリア(携帯電話会社)分野で世界一になるのに時間がかかりすぎる。TモバイルUS統合交渉が失敗に終わり、孫さんは各国の通信当局の認可が必要なキャリアの統合に疑問を感じるようになった」という。

むろん、孫氏は自らの志は一切変わっていないと強調する。「(デジタル分野の)情報革命を追求してきた。アナログ型の分野には興味がない。通信分野も旧来の電話ではなく、モバイルインターネットだから投資した」という。確かに孫氏はパソコンソフト卸、インターネット、それを活用した通信分野と領域を拡大、「シンギュラリティー」もデジタル革命の延長線上にあるのは事実だ。

「孫さんは最近ノリノリだ」

サウジアラビア政府系のファンドと共同でつくる10兆円のファンドは「近く成立する」という孫氏。これまでも大型買収を繰り返してきたが「今までは資金が限られていて、技が小さくなっていた」とまで言ってのけた。ケタ外れの巨額買収を仕掛ける算段だ。

ただ、いずれもソフトバンク社外取締役のファーストリテイリングの柳井正会長兼社長と、日本電産の永守重信社長の両氏は「孫さんには投資家ではなく、世界的な事業家になって欲しい」と話す。「今までは運が良かっただけ。あの買収戦略はいつか行き詰まる」(米系ファンドの関係者)と批判的な声も少なくない。

「孫さんは最近ノリノリだ。白髪や老眼など老いが目立ってきたが、肌の色つやがこの数カ月で再びよくなり、テカテカしてきた」(業界関係者)という。買収王、孫氏を誰も止めることはできなさそうだ。

(代慶達也)

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