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林久喜校長

林久喜校長

 にわかに信じ難い話だが、筑駒では文化祭、音楽祭など生徒全員参加のクラス対抗別行事が目白押しだ。とても受験勉強する暇があるように思えない。

受験指導は一切しない

では授業で難関大学対策の受験指導をしているのか。林校長は「いいえ、各教師が信じたアカデミックな授業はやりますが、受験対策は一切しません」と話す。私立の中高一貫校は高2までに6年間の学習科目を終え、最後1年を受験勉強に集中させる学校も少なくないが、「うちは高3までに範囲まで終わらない科目もありますね」(林校長)という。

本当なのか。筑駒の卒業生らに聞くと、「受験対策は難関大学進学塾の『鉄緑会』とか、塾でやる生徒が多いですね」(英単語アプリのmikan社長の宇佐美峻氏)という。受験勉強が塾任せならば、筑駒の存在意義は薄いのではないかというとそれは違う。あくまでも生徒の才能を磨き上げているのは、この数多くの学校の行事と授業にある。

「将来、革新的な電子マネーのシステムをつくりたい」。あどけない笑顔でこう話すのは中2の男子生徒だ。文化祭に訪れた人たちに電子マネーやインターネット上の仮想通貨『ビットコイン』の仕組みや問題点などを論理的に明快に説明する。他の教室に行くと、独自開発したゲームのアプリや自ら設計した電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」の製造方法など、複雑な方程式を用いながら、それぞれの生徒が発表する。訪問した父兄らは大半が口をポカンと開けて感心するばかり。

林校長は「彼らはみんな自身でテーマを見つけて自分でより深く学ぶ」。この結果、自然科学系では大学の数学や物理、化学、生物の水準を超える生徒がどんどん生まれる。演劇を書く生徒は異常なほどの国語力がつく。「授業中に受験の内職をする生徒はいないが、文化祭準備の内職をやる生徒は結構いる」と浜本副校長は笑う。

あの野田秀樹はすでに筑駒時代からスター

「あの人は天才だ」。経営共創基盤代表取締役の冨山和彦氏も筑駒の出身だが、文化祭で演劇を見たときに身震いした経験があるという。先輩の野田秀樹氏を目当てに3日間の文化祭が一般の女性客らであふれた。野田氏はその後、東大を中退し、劇作家、演出家、俳優として有名になる。

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