高校生社長までいる「東大に一番近い進学校」の素顔
筑波大学付属駒場中学・高校を訪問

浜本悟志副校長
すでに40年以上も前の話だが、浜本副校長も野田氏の1年後輩でその場面を目撃した。「今も昔も変わらない。筑駒生の才能を披露する場が文化祭など学校行事です。そして各行事ごとにスターが生まれたりする」(浜本副校長)という。しかも各行事は基本的にクラス対抗の形式のためリーダーシップやチームワークも養う。林校長は「わがままにやると結局失敗する。行事が生徒を育てる」と話す。
筑駒の授業もその養成の場だ。「中1~2で他の学校と同様にピタゴラスの定理を勉強する。普通の中学生なら1つの証明法などを覚えて終わりだが、うちの生徒は独自の証明法を次々授業で勝手に考案する。すでに30通り以上出ている。担当教師がついていけないものもある。この証明法はすごいとなると、授業でワッと拍手が起こる」(浜本副校長)。
各教室の黒板は他の学校に比べて異常に大きい。筑駒の黒板は特注品で、それがいまや名物となっている。生徒が黒板に自分で考えた回答をドンドン書き込むからだ。結果、筑駒には高1、高2レベルで東大大学院の水準の生徒もいる。数学オリンピックなど国際的なイベントにも次々挑戦し、自身の才能を磨く。
起業家も次々 現役の高校生社長も
筑駒の卒業生は圧倒的に研究者や官僚になる人が多く、経営者は比較的少ない。しかし、最近は研究開発型ベンチャーの起業家も増えてきた。宇佐美氏は東大工学部を休学して英単語アプリ「mikan(ミカン)」を開発して起業した。ロボティクス開発のイクシー(東京・千代田)代表の近藤玄大氏は東大大学院からソニーを経て独立した。手のない人が直感的に操作ができる電動義手の開発で注目を集めている。
実は筑駒には「現役社長」もいる。カードゲームを発売するケミストリー・クエスト(相模原市)代表取締役、米山維斗君は高校在学だ。「まあいいんじゃないですか。別に授業をサボって社長業をやっているわけではないので我々は干渉しない。時間外に何をやろうと自由ですから」。林校長も浜本副校長も意に介さぬ様子だ。
自由な環境の下で、文化祭など行事を通じて学問を徹底的に探求する筑駒生。学校から徒歩10分のところには東大の1~2年生が通う東大駒場キャンパスがある。文字通り筑駒は東大に一番近い学校といえるだろう。
(代慶達也)
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