予測本の季節 『世界を変える100の技術』八重洲で注目
八重洲ブックセンター本店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店を訪れた。相変わらず『やり抜く力』『住友銀行秘史』が強い。秋口からの強力な新刊が売れ続ける中、年の瀬が近づいてきたこの時期ならではの本が浮上し始めた。来年を展望する予測本だ。
テクノロジーの未来に注目した予測本
ビジネス系出版社各社が出す予測本の中で今年は新顔の1冊が抜け出している。日経BP社編『世界を変える100の技術』(日経BP社)だ。「日経テクノロジー展望2017」の副題が付く。同社の持つ技術系専門誌の編集長30人を中心に執筆チームを組み、専門誌の記者総勢200人が挙げた「世界を変える技術」「2017年に注目を集める技術」から100を選び、技術の素人にもわかりやすく解説した内容だ。この時期に出る予測本は経済から政治、国際情勢まで幅広な世の中のテーマを総覧するものが多いが、「テクノロジーに絞ったところが新顔ならではの特徴で、そこが注目されている」とビジネス書を束ねる同店2階フロア長の木内恒人さんは話す。
全体は8章構成。第1章「すべてが変わる」で総論的にテクノロジーの現在と未来を展望しながら15の技術を紹介、以下「交通が変わる」「住まいが変わる」「医療が変わる」「産業が変わる」「危険から守る」「もっと早く、もっと便利に」とテーマごとに章を立てその分野の技術を取り上げる。最後の8章ではIT(情報技術)、バイオなど4人の編集長が技術の未来の課題や死角を座談会で検討する。
ストーリーの中で技術を展望
技術ひとつひとつに同じページ数を割り振るのではなく、それぞれの章のストーリーに応じて技術が紹介され、そこに技術名の小見出しが入る。例えば、「電気味覚フォーク」は半ページにも満たない解説だが、「接客ビッグデータ」には図版込みで5ページが当てられる。「交通が変わる」なら、その章のストーリーに沿って自動運転から道路の未来、航空機の未来まで展望できるという具合。全体像の中で技術が解説されるから、技術は素人という読み手でも頭に入りやすい。
同店では入り口の脇に店頭販促(POP)のパネルと組み合わせた特設の平台3台を設置、予測本の2大定番『中原圭介の経済はこう動く 2017年版』(東洋経済新報社)と『これからの日本の論点 日経大予測2017』(日本経済新聞出版社)に加えて、『世界を変える100の技術』を並べている。「1階の売り場での動きでもBP本が一番」と木内さん。金融とITを融合したフィンテックがクローズアップされ、自動運転や、あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」への関心も大きく高まった今年だけに、八重洲周辺のビジネスマンの間では技術の未来への関心が高いようだ。
秋の強力本、売れ行き好調続く
それでは先週のベスト5を見ておこう。
1位と2位は著者、版元関係のまとめ買いでランクインした。3位はこの週、著者によるイベントが同店で開かれ、そこで大きく売れた。ホテルを知り尽くした著者2人が明かす通ならではのホテルの利用法の本。内容の一部は「NIKKEI STYLE トラベルチャンネル」でも紹介している。4位と5位に秋の強力本2冊が並ぶ。『やり抜く力』は「一度落ち着いたが、また伸ばしてきている」(木内さん)という。惜しくも5位までには入らなかったが、『「言葉にできる」は武器になる。』『LIFE SHIFT』という同じく秋の強力本を7、8位に押し下げて『世界を変える100の技術』は堂々の6位だ。
(水柿武志)