東大首席の乙女心 ヒラリー敗北に結婚観も大揺れ
元財務官僚の山口真由さん
山口さんは「日本には『スイッチ男子』が増えているのでは。会社では男女同権といいながら、家庭に戻ると、家事をやるのは女性の仕事という男性が少なくない」と感じた。一昔前まで日本は、「会社も家庭もコンサバ(保守的)だったが、今は会社ではリベラルだが、家庭ではコンサバ。一方、米国では会社も家庭もリベラルな男性が多いのでは」と考えた。その後、山口さんはハーバードに留学し、ちょっと驚きの光景を目にした。
5月のハーバード大の卒業式。来賓の有名映画監督スティーブン・スピルバーグ氏の演説に観衆が酔いしれているとき、1人の赤ん坊が泣き叫んだ。しかし、母親の女性はそれを無視、必死になって世話しているのは父親の男性1人。山口さんは「これが米国のリベラル夫婦か」と半分あっけにとられた。
ハーバードはリベラルカップルだらけ
ハーバードのカップルは四六時中議論ばかりしている。両者は何事も対等な立場で、理性的に協議して合意、物事を決める。スピルバーグ氏の演説中の世話は父親の役目と決めれば、どんなに赤ん坊が母親を求めても母親は何もしない。これがリベラル夫婦だ。
ハーバードの友人に「あなたも、こっちの男性とつきあえば」と勧められた。リベラル夫婦こそが理想像かなと思ったが、何となく違和感も覚えた。公私いずれの場でも、いつも理性的に協議して物事を決めるのはさすがに疲れる気がする。
わだかまりを感じたまま、米国から帰国して飛び込んできたのが、米大統領選のニュースだった。リベラル派が推し進めてきたグローバル化の潮流のなか、結果として米国民が選んだのが保守派のトランプ氏。ローカルの逆襲だった。
「信じられない」と思いながら、合点がいく面もいくつか浮かんだ。「ビル・クリントン氏が大統領在任中に不倫が発覚した際、ヒラリー氏は理性的に話し合い、離婚はとどまったとみられていたが、米国の市民は『何か無理しているのでは』『おかしい、うそをついているのではないか』と感じたのではないでしょうか。結果、ヒラリー氏を信用できず、このような選挙結果になったと、そう説明する米関係者も少なくありません」という。リベラル夫婦の限界を痛感した。