日本最強の進学校はどこ? 灘校の広すぎる廊下
灘中学・高校の研究(下)
実際、「僕なんて東大は全然無理な成績でしたが、仲間に助けてもらってなんとか現役で受かった」(東大工学部3年生)と話す卒業生は確かにいる。
灘の校是は、講道館柔道の創始者で、同校創立時の顧問、嘉納治五郎が唱えた「精力善用」「自他共栄」だ。全力を尽くし、自分だけではなく他人との共栄をはかれ、という意味だ。神童と呼ばれる灘校生は、時にはわがままで、独善的な言動をとることもあるという。自由な校風だが、和田校長はこの校是だけは口酸っぱく生徒に伝える。
入試科目に社会科がない
最後になったが、この灘中学・高校に入学するには独特の入試がある。中高入試ともに社会科が入試科目に課せられていないのだ。灘中の場合、国語と算数は2日間にわたって入試があり、1日目は基礎力、2日は応用力をはかる。両科目ともそれぞれ200点満点+理科があり、500点満点で合否を決める。灘高だと、そこに英語は加わるが、やはり社会科はない。灘が問うのはあくまで論理的に物事を考える力で、暗記力ではないからだ。社会科があれば、詰め込み型の受験になる可能性がある。
和田校長は「社会軽視ではない。むしろ社会嫌いになってほしくないから」と話す。日航会長の大西氏は「社会科がなく暗記重視でなかったので、受験勉強にそんなに時間をとられなかった」と振り返る。
筑駒、開成 灘に合格すれば三冠王
灘中の入試は1月中旬、あと1カ月に迫っている。「東京からもたくさんの生徒が受験に来てくれます」(和田校長)という。「関東では開成、筑駒、そして灘に合格した生徒を『三冠王』と呼ぶ」と東京の有名進学塾、早稲田アカデミーの講師は話す。首都圏の生徒は筑駒や開成に合格すれば、灘には進学しないケースがほとんど。しかし、灘には関東など東日本出身者のほか、「名古屋や岡山から新幹線通学している生徒もいる」(和田校長)という。来年も全国から多くの神童たちが神戸に集結しそうだ。
(代慶達也)
前回掲載「東大理三も京大医も制覇 灘高、強さの秘密」では、「灘には『6つの学校』がある」とも称される独自の教育体制を探りました。
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