開成・東大卒の脳外科医 なぜベンチャーに
メドレー代表取締役 豊田剛一郎氏
瀧口氏は独自路線を歩む。高校3年生の時、今後の進路を検討するなかで大学進学よりも事業に関心を持ち、17歳の時に起業し、大学には進学しなかった。その後、メドレーを設立し、医療介護の求人サービスを開始した。2人は医師と起業家と全く別の道を選んだが、ネット上で再会、「もっと患者も医師も納得できる医療を目指すべきだ」という点で意気投合した。
豊田氏は米国から帰国後、「一度、病院の外から医療界を見てみたい」とマッキンゼー・アンド・カンパニーにヘルスケアのコンサルタントとして転身した。そのころ瀧口氏は、求人事業が軌道に乗り、さらに医療に切り込むサービスの開発を検討していた。そのためには「医療の専門知識を持つ立場から事業を支える存在が必要だ」と考え、豊田氏に共同代表とならないかという話を持ちかけた。そして豊田氏は、「瀧口と話して第2の創業をしようと」決意し、2015年2月にメドレーの代表取締役に就任し、共同の経営者となったのだ。
「医療の課題を解決する様々なサービスを提供するのが目的です。起業家になりたかったのではなく、医療の世界を変えたい、効率化したいから挑戦しました。失敗したら、また医者に戻ればいいという甘い気持ちで挑んでいない」と豊田氏は話す。わずか1年余りの間に、周囲で同じ理念を持つ人材を次々にメドレーに誘った。そして相次いで新規事業を立ち上げた。
DeNAとは違う
まず、オンライン病気事典「MEDLEY」という医療メディアを立ち上げた。1400以上の病気情報のほか、約3万点の医薬品や約16万件の医療機関情報を集約。約500人の医師とのネットワークを構築し、医療情報を日々更新している。
ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療情報サイトのコンテンツの信頼性が問われ、社会問題化したが、豊田氏は「正確な医療情報を提供するのは極めて困難です。明確なエビデンス(証拠)が必要ですし、世界の医療情報は日々更新されていきます。医師によっても治療に対する考え方に違いがある。ある有名なサイトの医療情報は90%に間違いがあるとの指摘もあります 」という。
しかし、メドレーは多くの医師とつながっているだけでなく、社内に複数の医師を抱えている。「正確で客観性の高い医療情報を提供できる。そこが最大の我々の強みです」と強調する。