だから日テレは強い お膝元汐留で売れるOBの分析本
リブロ汐留シオサイト店

ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。前回年末に訪れたとき、「長時間労働問題に揺れる 電通のお膝元で売れる本」として紹介した伊賀泰代『生産性』(ダイヤモンド社)は、今回も売れ行きナンバーワンをひた走る。その一方で、もう一つのご近所大企業、日本テレビについて書かれた新書が着実に売れ行きを伸ばしていた。
90年代初めの大改革の軌跡追う
その本は岩崎達也『日本テレビの「1秒戦略」』(小学館新書)。日テレOBが1990年代初めの同社の大改革を振り返った内容で、その後長きにわたって同社が好調を続ける要因が明らかにされている。その社内改革ストーリーはビジネス書としても読みどころたっぷりだ。
80年代のテレビ界はフジテレビが視聴率の王者として君臨していた。打倒フジテレビを目指して、日テレに若手を集めたフォーマット改革のプロジェクトチームが立ち上がる。若き岩崎氏もその一人として加わった。フォーマットというのは1週間丸ごとの番組編成から、番組と番組のつなぎ方、番組の中でのCMの入れ方、個々の番組のつくりまで、すべてを含んだ意味で使われており、チームに集まった13人は2週間分の全番組をライバル、フジテレビと見比べ、1分1秒ごとの動きを細大漏らさずB全サイズの方眼紙に書き付けていった。その結果、フジの強みと自社の弱みが肌感覚で体感でき、その危機感を原動力に全面的な改革がスタートするのだ。
マネジメントの要諦が随所に
トップのリーダーシップ、抵抗勢力をも説得して巻き込んでいく動き方、部門間の風通しをよくする人事のあり方、シンプルなビジョンの大切さ……社内改革に必要な様々なマネジメントの要素がフォーマット改革のプロジェクトから浮かび上がってくる。ビジネスの基本どおりに状況を分析して計画を実行し、その結果に地道にカイゼンを加えて強いコンテンツを作り出す。テレビ局特有の戦術論のおもしろさもさることながら、そうした強いサイクルを生み出し、今もDNAとして持続しているところに同社の組織としての現場力の強さを見る思いだ。「ザ!鉄腕!DASH!!」や「世界まる見え!テレビ特捜部」など、日テレの人気番組がマンネリに陥らず長寿を保っているのもそこに秘密がある。
「12月初めの発売だが、ここへ来てまた売り上げが戻ってきている」と店長の大城優樹さん。新書なのでビジネス書のランキングに入ってこないが、店全体のランキングで先週は2位と好調だ。
マインドフルネスに関心 『1分間瞑想法』が3位に
それでは先週のベスト5を見ていこう。
冒頭にも書いたとおり、『生産性』が快走する。2位の『LIFE SHIFT』も相変わらず強い。同率3位に3冊が並ぶ。『人間は9タイプ 仕事と対人関係がはかどる人間説明書』はビリギャルの先生として名をはせた塾講師の本。家庭編を昨年9月に出したのに続く仕事編だ。『ビジネスと人を動かす 驚異のストーリープレゼン』は米国のコミュニケーションコーチによるプレゼンスキルの指南書。『1分間瞑想法』は最近よく話題になるマインドフルネス瞑想のやり方を説いた本。ここではビジネス書に分類していないが、専門医による清水俊彦『頭痛は消える。』(ダイヤモンド社)なども売れており、ビジネスパーソンの心身の健康をテーマにした本は根強い人気だ。
(水柿武志)