伝える技術に溺れるよりも、真摯な話しベタであれ
スタンフォード大学経営大学院 オライリー教授に聞く(5)

スタンフォード大学経営大学院のキャンパス (C)Elena Zhukova
世界でもトップクラスの教授陣を誇るビジネススクールの米スタンフォード大学経営大学院。この連載では、その教授たちが今何を考え、どんな教育を実践しているのか、インタビューシリーズでお届けする。今回はチャールズ・オライリー教授の5回目だ。
日本では、「伝える技術」についての本が数多く出版されているが、こうした技術に溺れるのは危険だとオライリー教授は警鐘を鳴らす。真摯な話し下手は、テクニックで話す人に勝るのだという。その真意とは?(聞き手は作家・コンサルタントの佐藤智恵氏)

スタンフォード大学経営大学院 チャールズ・オライリー教授
話し下手でも構わない
佐藤:スタンフォードにはコミュニケーションを学ぶ授業がたくさんあります。オライリー教授もリーダーシップの授業でコミュニケーションについて教えていますが、どのような言葉で語りかければ、部下はやる気になるでしょうか。
オライリー:とってつけたような人工的な言葉ではなく、心から言っているのが伝わるような言葉を使うことです。それから、ストーリーをうまく取り入れることです。ただ事実を羅列するよりも、ストーリーで語るほうが、より聞き手の記憶に残るからです。
優秀なリーダーは優秀なコミュニケーターであるべきだというのは理想論で、現実の世界にそんなリーダーはほとんどいません。「コミュニケーション術さえ身につければ、優秀なコミュニケーターになれるでしょう」という人もいますが、私は懐疑的です。「この人は本に書いてあるようなコミュニケーション術を駆使して、話しているだけだな」「器用に話しているけれど、何だか心がこもっていないな。本心で話しているんだろうか」と思われたら、一巻のおわりです。誰からも信頼されなくなります。