伝える技術に溺れるよりも、真摯な話しベタであれ
スタンフォード大学経営大学院 オライリー教授に聞く(5)

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。
誠実に話すことが大事
佐藤:日本では、「伝える技術」についての本が数多く出版されています。
オライリー:そういう本も役には立つのですが、その通りやろうとすると策に溺れてしまう恐れがあります。初対面では気づかれないかもしれませんが、1年も一緒に仕事をしていると、技術で話していることを察知されてしまいます。
佐藤:ということは、仮に話し下手でも、本心が伝わるように一生懸命話せばいいということですか。
オライリー:私の授業でも、話し下手の経営者が講演することもあります。たとえば社員6000人を抱える、ある大企業の最高経営責任者(CEO)。学生からの評判は今ひとつでしたが、社員からは「ミスター正直」と呼ばれ、慕われています。人前で話すのはうまくなくても、彼は絶対にうそをつかないことを知っているからです。
佐藤:それは日本人にとっては励みになる事例ですね。
オライリー:スピーチ上手であるに越したことはありませんが、基本的に普通の人はリーダーといえども、そんなに人前で話すことに慣れていません。そういうときは、下手でもいいから、心を込めて、誠実に話すことです。