東大理三、合格者の6割 進学塾「鉄緑会」の全貌

鉄緑会の講師のほぼ全員が東大生か東大卒業生だ(写真は東大駒場キャンパス)
スーパーエリート塾といっても過言ではない鉄緑会。ただ、授業料は決して高いわけではない。月額の授業料は1科目1万5380円、2科目で2万9740円。ただ、鉄緑会に入会するのは決して容易ではない。
指定校は13校 4月からは渋幕も
東京の鉄緑会には「指定校制」があるからだ。現在の指定校は、開成(鉄緑会の在籍生徒数715人)、桜蔭(同635人)、筑駒(同465人)、麻布(260人)など首都圏の中高一貫の有名進学校13校だ。東大の進学実績を考慮して指定校を随時入れ替えており、今年4月には新たに渋谷教育学園幕張高校(渋幕、千葉市)が指定校になる。同校は急速に進学実績を伸ばしており、16年の東大合格者は76人(15年は56人)で全国5位に躍進した。
渋幕の田村哲夫校長は「鉄緑会ですか? 我々は決して塾を推奨するわけではありませんが、お母さん方が気にしますね。まあ、実力が認められたわけですからありがたいことですが」という。
大半の有名進学校はやはり塾をすすめないが、中学受験の場合、志望校も親の意向が強く反映する。今年、都内の小学校から渋幕に子供が合格した母親は、「渋幕は千葉市にあるので、迷ったが、進学実績が伸びているし、なんと言っても鉄緑会に通えるのは魅力」という。鉄緑会の指定校制は有名進学校の「格付け」のような役目を担っている。
ただ、冨田氏は「指定校以外の生徒でも入会試験に受かれば入れますが、正直言ってついていくのは大変かもしれない」という。中学での鉄緑会の授業は1コマ3時間で、数学と英語しかない。決して大量に宿題がでるわけではないというが、中学3年終了時点で高校3年までの英数の基礎は終了する。授業の進行はかなり速い。高1まではみっちり英数を固め、理科や国社は高2から授業がスタートする。「高2、高3はかなりレベルの高い問題を解く。鉄緑会に通うのは週3日程度、宿題の量は1日にならすと1時間程度です。決して無理なカリキュラムではありません」(冨田氏)というが、かなりの学力と努力が必要だ。
鉄緑会・東京校の16年の合格実績は、東大が277人、国公立大学医学部は228人。1学年の東京校の生徒数は約700人だから、4割程度が東大に合格したわけだ。他も医学部に合格しており、ほぼ8割の生徒は第1志望の学校に進学する。
東京、関西以外の全国展開は至難の業
鉄緑会は現在、ベネッセグループ傘下にある。地方向けのネット授業も可能になったが、東京、関西以外の全国展開は至難の業だ。冨田氏は「東大や難関医学部進学を指導できる講師を集めにくいからだ」という。鉄緑会の教材やノウハウを欲しがる地方の生徒は少なくない。ただ「鉄緑会の場合、教材の市販化は難しい。やはり優秀な講師がこの教材を使って、しっかりと直接教えないと身につかない」という。
冨田氏は「有名進学校の生徒といっても天才なんてほとんどいない。うちに来てもまれて、鍛えられて能力が高まる生徒が大半です。ですから東大理三に受かったからといってテングになるような子はいないですね」と話す。
同氏は名古屋市の名門進学校、東海高校の出身。「名古屋にも教室を開校して欲しいという声もありますが、難しいですね。ちなみに名古屋から新幹線で京都の教室に通っている生徒はいますよ」という。東大合格者の地方出身者比率が下がっているが、この背景に鉄緑会の存在があるのかもしれない。
(代慶達也)
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