変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

現在、工藤さんは、自分自身の経験をもとに「40歳からの遠距離介護」というブログを運営し、『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』(広済堂健康人新書)などの書籍を通じて、介護離職を迫られる人たちへの情報提供を本業として活躍している。

「認知症介護の経験は、マネジメント能力など企業内でも生かせることも多く、理解が深まれば、企業にとっても損失となる介護離職が減らせるのではないかと考えています」と語る工藤さんは、対企業向けの"介護離職抑止"についても意見を求められることが増えているという。

「世の中から置き去りにされてしまう」という辛さと罪悪感

「介護のために仕事を休みがちになり、これ以上職場の仲間に迷惑をかけられない」

「フルタイムの介護をやれる人が自分しかおらず、選択の余地がない」

「配偶者や親族に迷惑をかけて、自分の親の介護を任せるわけにはいかない」

どれだけ充実した仕事をしていても、いざとなったら逃げようがなく、やむを得ず仕事を辞めるしかなくなるのが、現在の介護離職の実態です。

「将来的には、兼業や副業、あるいは複業が当たり前になることによって、人々はより多様な働く目的を実現することができる。また、一つの会社に頼り切る必要もなくなるため、働く側の交渉力を高め、不当な働き方や報酬を押し付けられる可能性を減らすことができる。このような働き方になれば、当然、今とは違って、人は、一つの企業に『就社』するという意識は希薄になる。専門的な能力を身に付けて、専門的な仕事をするのが通常になるからだ」

厚生労働省がまとめた「働き方の未来2035」には、こんな未来像が描かれ、それによって介護離職ゼロが実現に近づいていくと書かれています。加速する最近の「働き方改革」の流れを見ていると、確かに中長期的にはそんな未来が実現する可能性は高いかもしれません。

ただ、現時点で介護と仕事の両立に悩む方、または介護離職や介護転職をした方にとっては、心理的、体力的、経済的負担は計り知れないものがあるのが現実です。

つい昨日まで会社や社会で重責を担って活躍していた人が、突然、介護生活に入った瞬間に、「社会と隔絶されたところに来てしまった」「世の中からどんどん置いていかれる」といった不安や恐怖を抱いてしまうことも多いようです。

介護離職したことを「後悔していない割合」70%

上記のような不安や心理的負担を背負いながらも、「介護専念者の70%が離職して介護に専念したことを後悔していない」という調査結果が出ています。(上述「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査」)

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