ミドルを突然襲う「介護離職」 その時あなたは?
ミドル世代専門転職コンサルタント 黒田真行
この調査を深読みすると、正社員という地位を捨て介護に専念することは覚悟が必要なため、十分にリスクを考えて納得する場合は後悔する人が少ないというメカニズムのようです。しかし、介護時間を増やすために、残業が少ない会社・通勤が近い会社に転職するケースだと、職場の理解を十分に得られないことが起こりがちで、人間関係に苦しみ後悔するケースもあるといいます。単に、会社や仕事の労働条件でなく、職場内での理解や協力が不可欠だということを物語っています。
前述の工藤さんはこう語っています。「私の場合、今までの働き方を考え直す、大きなチャンスだと思えたんです。あるブロガーの言葉に『40代で働き方を選びなおす』というメッセージがあり、まさにそれを実行するきっかけになったのだと思います。結果的に自分なりに納得できる働き方を選択できたと考えています」
大成建設、大和ハウス工業… 増えつつある企業の介護支援業
一方で「優秀な人材を介護という必然で失いたくない」と考える企業は、すでにアクションを起こし始めています。
大成建設では、2010年に仕事と介護の両支援を開始。介護に専念するための制度的な支援ではなく、介護セミナーや介護に関するリーフレットなど、情報提供からスタートし、14年に介護休業制度の拡充を導入。情報伝達と介護に対する心理的負荷を軽減する施策をさらに深めていくと発表しています。
また、大和ハウス工業では、15年4月に、介護が必要な親を持つ社員の帰省旅費を補助する「親孝行支援制度」を導入。遠方に済む親元に何度も帰省する旅費負担を軽減するために、年4回を上限に、帰省距離に応じた補助金(1.5万~5.5万円/回)を支給しています。今後、企業のこのような施策の充実によって、介護と仕事の両立の可能性が広がっていくことに期待したいところです。
連載は3人が交代で担当します。
*黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
*森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
*波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント社長

ルーセントドアーズ代表取締役
「ミドル世代の方々のキャリアの可能性を最大化する」をテーマに、日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営している。1989年、関西大学法学部卒業、リクルート入社。88年より転職メディアの制作・編集・事業企画に携わる。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。13年リクルートドクターズキャリア取締役などを経て、14年ルーセントドアーズを設立。
35歳以上の転職支援サービス「Career Release40」
http://lucentdoors.co.jp/cr40/