ケニアで3年、「無水トイレ」挑戦で広がった世界
LIXIL ソーシャルトイレット部 山上遊さん(下)

ケニアに設置した無水トイレに立つ山上遊さん(中央)
「外出先でトイレがないと手が震えちゃう」ほどのトイレ好きが高じ、ケニアのナイロビへと赴任、「循環型無水トイレシステム」の事業化に取り組むことになったLIXILの山上遊さん。そこでは、日本とはまったく違う住環境が広がっていた。安全のため、夜間は鍵がかかったままで使用できないスラムのトイレ。しかたなく、袋に入れた排せつ物を窓から放り投げる人々。そんな途上国の日常にもまれ、彼女は今、何を思うのだろうか。
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ケニアにいると、とにかく午前中が忙しいんです。夕方のラッシュにかかると車がまったく動かなくなるものですから、みんな朝が早くて、官公庁など午前7時からミーティングが入ることもあるくらいです。
公共交通機関が整備されておらず、通勤に使える交通手段は自家用車かバスだけ。排水路も整備されていないため、雨期になると、ただでさえ混んでいる道路が冠水して車が走れなくなります。いったん雨が降り始めると、みな我先に家へ帰ろうとして慌てますから、事故も多くなる。信号がなく、ラウンドアバウト(環状交差点)に警官が立って誘導するのですが、ひとつのラウンドアバウトを通り抜けるのに1時間以上かかったりします。
外出する際にはいつもカバンの中にノートパソコンとモバイルルーターを入れて、渋滞にはまったら、車の中で仕事ができるようにしています。それと、調査のためスラムなどに向かう場合は、途中でトイレに行きたくなったりしないよう、出がけに水を飲まないようにしています。スラムのトイレはホントに汚くて、暗い上に、管理者にいちいち鍵を開けてもらわないと使えなかったりしますから。
1日2、3回の停電は当たり前
ラッシュにはまると日が暮れるまでに帰れなくなりますから、打ち合わせをするのなら、遅くても午後2時か3時までには終わらせる。夜間は危険なので極力外出しません。
一番嫌がられるのは、金曜日の夕方に打ち合わせを設定すること。週末になると、みんなウキウキして早く帰っちゃうんですよ。いったんは約束が入ってもキャンセルされてしまったり、行ってみたら相手がいなかったり、という場合も多いので、「金曜日の午後以降は打ち合わせを設定するな」がケニアの鉄則なんです。