衝動買いも予算オーバーも 「決断疲れ」が原因?
スタンフォード大学経営大学院 レバーブ准教授に聞く(1)
ドイツの新車販売店で実験

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。
佐藤:「決断疲れ」をどのように立証したか、ご説明していただけますか。
レバーブ:ドイツの3都市の新車販売店で、750人の顧客を対象に次のような実験を行い、その結果を2007年の論文で発表しました。
ドイツでは、新車を購入する際、事前にカスタムオーダーするのが一般的で、顧客は以下の選択肢の中からそれぞれ1つを選ばなくてはなりませんでした。
・26種類の外装色
・25種類のエンジンとギアボックスの組み合わせ
・13種類のホイールリムとタイヤの組み合わせ
・10種類のハンドル
・6種類のバックミラー
・4種類の内装スタイル
・4種類の変速ノブ
私たちは、750人を次の2つのグループに分けて、それぞれ何をどのように決断するかを実験しました。
・昇順グループ:4種類の変速ノブから、4,4, 6……56 と昇順で決断
佐藤:2つのグループで、どのような差異が認められましたか。
レバーブ:56種類の内装色から決断していった降順グループは、26、25と進むにつれ、次第に自分で選ぶことを放棄するようになりました。結構早い段階で「もうデフォルト(標準設定)でいいです」と、決断するのをやめてしまったのです。一方、4種類の変速ノブから決断していった昇順グループは、降順グループよりも多くのカテゴリーを自分で選択しました。
佐藤:56種類からはじめた人たちは、すぐにヘトヘトになってしまい、4種類からはじめた人たちは、しばらくヘトヘトにならなかったわけですね。最初の方にたくさん決断させれば、顧客は「決断疲れ」をおこし、デフォルトを選ぶようになる――この結果を知っていれば、店員は顧客がデフォルトを選ぶように誘導することができますね。