グーグルも驚く新興校 廃校寸前が東大合格校に再生
東京・港の広尾学園中学・高校

広尾学園中学・高校(東京・港)
東京都港区の南麻布にある中高一貫校の私立、広尾学園中学・高校。現在は男女共学校だが、2006年まで伝統的な女子校だった。一時は偏差値表にも校名が載らないほど低迷したが、17年の大学入試では、東京大学、京都大学の推薦入試で次々合格。両大学は学業で際だった実績がなければ、推薦枠での合格はできないといわれる。今、広尾学園は米グーグルなどの関係者も驚く最先端の教育インフラを備えた新興校として注目を集めている。どのようにして再生したのか。
中2がネットで英語の論文読み実験
「この触媒を使って太陽光だけで水の電気分解を効率的にやろうという実験をやっていますが、ただ、どうもこの触媒がうまく活性化しなくて」と首をひねるのは、まだ幼い顔立ちの中学2年生の男子生徒。「海外の論文も参考にしたんですが」といいながら、水の入った水槽に目をやり、ノートパソコンをたたきながら、隣の2人の男子生徒や女子生徒に話しかけている。
筆者が「英語の論文を本当に読めるか」と生徒に問うと、当たり前のように「はい、国内外の大学論文は、インターネット上で結構公開されていますから」という。
ここは広尾学園の校舎6階にあるサイエンスラボ。室内には大学クラスの研究室と同様の最新の実験機器や機材が並んでいる。中1と中2の医進サイエンスコースの生徒約70人が「理数研究」という授業を受けているところだ。数学や物理、生物など理系10グループに分け、それぞれのグループに7人の教師がついて、実験をやったり、ノートパソコンを見ながら、先生や生徒たちが盛んに討論したりしている。
偏差値教育はしない

金子先生は「広尾学園は最新の実験機器を備えている」と話す。
「IT(情報技術)をフル活用し、急激に学力を伸ばしている学校がある」。グーグル関係者からそんな評判を聞いて、同校を訪ねたが、確かに目の前の実験風景や生徒たちから話を聞くと、かなり学力の高い生徒だということは分かる。「正直言って、入学前は都内のトップ校ほどの学力があったとは思いませんが、ものすごいスピードで伸びていると思います」。同校の教師で、教務開発部統括部長の肩書を持つ金子暁先生はこう話す。
「様々なテーマを設定して、自分の興味のある分野で実験したり、研究したりしています。全員が端末を持っていますから、ネットで自在に調べられる。こんな機会を与えると、生徒たちはどんどん自分で学び、成長してゆきます」という。