グーグルも驚く新興校 廃校寸前が東大合格校に再生
東京・港の広尾学園中学・高校

田辺校長
田辺裕校長(東大名誉教授)は「この学校はかなりユニークだと思います。実験、実習を重視した研究者養成のような人材づくりやグローバル人材の育成を目指し、最適の環境を提供しています。受験のための偏差値教育はしません」と強調する。
在校生 バブル崩壊後に3分の1、経営難に
広尾学園はまだ誕生して10年の新興校だ。もともとは廃校寸前の女子校だった。在校生はバブル経済期の1990年に1792人いたが、2003年には3分の1以下の486人まで落ち込んだ。07年に広尾学園となるや、10年には1600人台とV字回復して現在に至っている。当時を知る金子先生は「それまでの経営陣は学校復活のための手立てを何も打たなかった。そこで教師陣で集まって、自分たちの手で学校改革をやろうと立ち上がった」という。
通常の組織の再生には新たな経営者が中心となるが、広尾学園は現場の教師陣がチームを作り、それぞれの役割を分担して学校再生に挑んだという。教師たちは日夜話し合い、再建の道筋を探ったが、その際のコンセプトは、大学受験のための教育ではなく、天才的な研究者や本物の国際人を育成するような独自の人材育成だった。
グーグルなどIT企業も協力
広尾学園中学の1学年の定員枠は240人。高校は280人。本科のほか、医進サイエンスコース(36人)、インターナショナルコース(80人)と3つのコースに分けた。医進サイエンスコースには大学並みの研究・実習環境を提供、インターナショナルコースにも海外の名門校並みの英語教育環境をそれぞれ提供することにした。インターナショナルのうち40人はアドバンストグループとして国語や日本に関する教科を除いてほぼ全教科の授業を英語で学ぶ。外国人の教師は18人~19人もいる。グーグルなどの協力の下で、ITのインフラ環境も整備した。全生徒がネット端末を携帯している。
グーグルとは様々な情報共有やプロジェクトをやったり、元最高経営責任者(CEO)のエリック・シュミット氏が来校して生徒たちとトークセッションをしたり、元日本法人代表の村上憲郎氏を特別講演に招いたりするなど、関係も深い。
改革を推し進めたのはあくまで現場の教師陣だが、13年には新たなリーダーとして、東京大学教授などを歴任した世界的な地理学者の田辺氏を校長に迎えた。金子先生は「普通はここまで急速にダメになる学校なんてないが、給料もまともにもらえないほど落ち込んだ。必死で改革した」という。
一連の学校改革が評価を得るようになって生徒数も回復。ただ「当初は教師たちは不安でした。自分たちの教育方法が本当に正しいのだろうか、自問してきた。自信が持てるようになったのは、昨年、東京工業大学に推薦枠で合格してからですかね」(金子先生)。