東大法でも揺らぐキャリア形成 首席女子も悩む処方箋
元財務省の山口真由さん
一方で省内は家族的な雰囲気に包まれていた。新人時代は先輩に何度も厳しく叱責されるが、昼飯、晩飯はすべて先輩のおごり。「財布は不要」で、体育会的なのりだった。山口さんは東大時代に1日19時間半の猛勉強をして司法試験に合格した。「眠らないように氷水を入れたバケツに足を突っ込んで勉強した」と根性は誰にも負けない。しかし、入省2年目のある日、心が折れた。
「俺たち、本当につきあっているのかな」――。大量の書類をかき集め、上司に説明に向かう途中で当時の恋人からこんなメールが届いた。「もうこの忙しいときに」と思い、携帯の電源をブチッと切った。
彼が理解してくれない
同時に「私、一体何をやってるのだろう。これから40年間もこんな生活が続くのか」と自問した。その後、山口さんは弁護士に転じたが、結果的に「ほかの先輩たちのように自分は国家のために奉仕するという意識をしっかり持てなかった」と振り返る。

東京大学
ある東大法卒の財務省幹部は「キャリア官僚は受難の時代ですよ。昔とはだいぶ違いますが、やはり忙しい。労働時間と給与を比べたら全然割に合わない。天下りにも厳しい時代だしね」という。
山口さんが東大法学部に在籍した頃は、官僚人気が下がり、弁護士など法曹界の志望者が増える時期だったという。しかし、暗転する。「司法試験改革は大失敗ですよ。後輩のなかには本当に食えない弁護士もいる」と東大法卒の弁護士は話す。司法試験改革により06年度まで1000人前後だった合格者の数は08年度から6年連続で2000人を突破、「弁護士間の競争が激しくなり、格差がつくようになった」と山口さんは話す。海外の弁護士資格を持つ人も増えた。山口さんもハーバード大のロースクールに留学した。
オバマ氏 ロースクールの典型的エリート
「ハーバードでは成績の評価を巡り、とにかく激烈な戦いを演じる。人を押しのけても発言する人が評価される」。スピーキングが苦手だった山口さんは圧倒された。それでも持ち前の負けん気で勉強し、最終的にはオールAの成績で修了した。