東大法でも揺らぐキャリア形成 首席女子も悩む処方箋
元財務省の山口真由さん
ハーバードのロースクールは独自の出世コースがある。その典型例が同スクール出身のオバマ前大統領だ。成績でトップクラスとなったオバマ氏は「ハーバード・ロー・レビュー」の編集長に、2年目にはプレジデント・オブ・ジャーナルの編集長に選ばれた。その後、法曹界でキャリアを積んで、大統領への道を歩んだ。「ただ前提となるのはロースクール時代の成績。まずトップ10%に入る必要がある。一方、東大法の学生はあまり勉強しないし、ちゃんと評価もされていない」と山口さんはいう。
ハーバードはアウトプット型
山口さんは「ハーバードなど米欧のロースクールは自ら発言し、その表現力が問われる『アウトプット型』。一方、東大法など日本の大学は教授が講義しそれを聴く『インプット型』。それぞれメリット、デメリットはあるが、ハーバードのやり方はグローバル社会を考えたときにプラスになるかもしれない」と話す。

大学側はインプット型の授業に、アクティブ・ラーニングなどの手法も取り入れて、学生をきちんと評価して社会に送り出すべきだというのが山口さんの考えだ。「ただ私自身もしゃべりが苦手だし、ハーバード方式がベストとは思いませんが」という。
東大法3年生の男子学生は、「今は絵に描いたエリートコースってあるんでしょうか。官僚になるつもりでしたが、広告代理店に決めました。でも転職するかもしれない」という。官僚や法曹界の人気が下がり、外資系のコンサルタント会社や投資銀行の人気が一時的に上昇したが、「今や多様化し、いきなりベンチャーに入る人もいる」という。(関連記事「なぜ東大生はワークスアプリに集まるのか」 )
キャリア形成が見えない
今春、東大文1に入学する都内の有名進学校出身者は「本当は医学部に行きたかったのですが、将来の職業はまだ未定です」という。東大法の学生や卒業生でもキャリア形成に揺らぐ。山口さんも「実は私自身がキャリアで迷走しています。官僚になり、弁護士になり、そして留学したけど、将来的には大学に戻りたいと考えています。しかし、博士号取得には時間もかかるし、どうなるか分かりません」と迷っている様子だ。東大法首席女子の悩みも当面つきそうもない。
1983年札幌市生まれ。2006年東京大学法学部を卒業、財務省に入省。08年退官、09年から15年まで弁護士として弁護士事務所勤務。2016年ハーバード大ロースクール修了。著書に『ハーバードで喝采された日本の強み』(扶桑社)など。
(代慶達也)
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