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実際、岡野教授の研究成果を受けて01年に米国の西海岸で創業した再生医療VBのサンバイオは15年に東証マザーズに上場した。創業者の森敬太社長は、脳梗塞で一度歩けなくなった人を歩けるようにする画期的な治療薬の開発に挑む。医療アプリ開発ベンチャーとして注目を浴びるキュア・アップ(東京・中央)も慶応医学部が支援している。

代表取締役の佐竹晃太氏は、実は慶応医学部の出身。医師であると同時に起業家だ。スマートフォンに対応した「治療用アプリ」を開発中という。実際にニコチン依存症治療用のアプリなどを開発しており、「ニコチン依存症用は、早期の薬事承認を目指して、慶応大学病院などの医療機関で臨床試験を進めている」と本格的だ。

創始者も企業育成

VB支援に岡野教授が熱心な背景には、大阪大学医学部教授を務めるなど、阪大で様々な研究成果を上げてきたこともある。「バイオの阪大」と呼ばれ、多くのバイオベンチャー企業を生み出したからだ。

「オール慶応」で医学部を支援する

「オール慶応」で医学部を支援する

岡野教授の合い言葉は「連携」だ。様々な分野の企業と組み、慶応大学内の理工学部や環境情報学部など他学部とも連携して医療分野の技術向上を促している。「外部の企業とも組み、オール慶応で卒業生の三田会などの支援も受けながら、医学部の発展を促したい」という。

かつて名門大の医学部は唯我独尊の世界だった。慶応医学部に限らず、東大や京大などの医学部の臨床分野の教授陣は大半が生え抜きだった。しかし、岡野教授は「今は能力主義ですね。他大学の医学部出身者も少なくない」という。

幕末期に活躍した緒方洪庵の適塾の流れをくむ阪大医学部。くしくも適塾では慶応義塾創始者の福沢諭吉が学んだ。阪大医学部、慶応とも実学重視。明治期、福沢諭吉も多くの企業を育成した。開設100年を迎えた慶応医学部。"陸の王者"は医を通じて新たなビジネスを育てようとしている。

(代慶達也)

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