塾に行く暇はない 浦高生徒は「14時間制」
埼玉県立浦和高校の杉山剛士校長に聞く
「神の手」の先輩から指導

浦和高校の正門
浦高は医学部志望の3人の生徒を天野氏のもとに送り、3日間にわたってみっちりと指導を受けさせるという。患者の了承を得て、なんとオペ中の手術室にも入る。手術前、当日、その翌日、患者の気持ちをどういやすのか、そんな重い課題に対峙し、生徒たちは真剣に考え始めるという。
天野氏は「勉強ができるから医学部に行くという発想はおかしいでしょ。まず医師になる『覚悟』をもってもらいたいと思い、お手伝いした」と話す。高い学力で医学部に入ったものの、医師としての心がけが足りない学生が少なくないからだ。現在、天野氏は他の高校の生徒も受け入れている。これまで浦高では9人が天野氏の指導を受けたが、全員が医学部に進学したという。
経済界にも浦高出身者は少なくない。三菱地所で会長を務めた木村恵司氏、双日会長の加瀬豊氏は、現在の浦高同窓会の会長と副会長で、浦高時代の同級生だ。「活躍している卒業生はいずれも部活に加え、古河マラや臨海学校を乗り越えてきた方々ばかり。ほかの進学校は部活や行事を制限したりするでしょうが、うちはあえて無理難題に挑んでもらう。それが10年後、20年後の人生に必ず役立ちます」と杉山校長。男女共学校が増えているが、あくまでも「タフでやさしい男」を育て続ける考えだ。
(代慶達也)