職員室の壁消えた栄光学園 有名OBが込めた母校愛
栄光学園の望月伸一郎校長に聞く

神奈川県鎌倉市にある栄光学園
古都・鎌倉の郊外にある完全中高一貫制の私立男子校、栄光学園中学・高校(神奈川県鎌倉市)。東京ドーム2.4個分の広大な敷地にはタヌキやリスも生息し、自然環境に恵まれているが、実に3人に1人が東京大学に合格するミッション系の進学校として知られている。政界や経済界のほか、学術界・建築界にも人材を輩出する。新校舎に生まれ変わったばかりの栄光を訪ねた。
新校舎 設計者はいずれも栄光OB
「ウチは建築家に恵まれていました。新校舎の設計に携わった方々はいずれも栄光のOB。有名な隈研吾さんだけではなく、日本設計の中でこのプロジェクトに携わった3人も栄光出身者です。学校の理念を理解してもらっているのでいい校舎ができました」。栄光の望月伸一郎校長は笑いながらこう話す。
JR大船駅から長い坂道を20分あまり登ると、丘の上に真新しい校舎群が見えてくる。栄光は創立70周年事業として、50億円強を投じて校舎の建て替えをすすめ、2017年春にオープンした。設計監修は新国立競技場の設計を手掛けた世界的な建築家の隈研吾氏だ。周りを威圧するような建物ではなく、環境に溶け込む「負ける建築」を志向する隈氏の原点が栄光だ。校舎は今どき珍しい地上2階建ての低層。RC(補強されたコンクリート)と木造のハイブリッド構造で、校内に木の香りが漂う。窓も大きく、明るく温かい雰囲気に包まれている。
自然と運動 長い坂と中間体操

栄光の新校舎は地上2階建ての低層で、木材を多用している
部活は週2日に限られており、運動部の活動が中心の学校とはいえない。しかし、この学校に通うと、体が自然と鍛えられる。通称「栄光坂」という長くて勾配のきつい坂道を6年間毎日通学するので、足腰は丈夫になる。2時限目と3時限目の間には「中間体操」と呼ぶラジオ体操がある。
1学年の定員は180人で6年制のため、1千人あまりの全生徒が一斉に15分間体操を行う。実は地上2階の低層となっているのはグラウンドと教室をスムーズに結ぶためでもある。栄光には独自デザインの制服があるが、各教室を回ると、制服姿は半分程度で、スポーツウエアやTシャツなど、動きやすくラフな格好をした生徒が目立つ。
自然環境が抜群の栄光。敷地は11万平方メートル強あり、山林もある。中学の生物の授業などでは教師から「裏山でネバネバした植物を探してきて」といった課題が出されるなど、野山を駆け回る場面が多い。新校舎に木材を多用しているのは、周囲の自然に溶け込むようなデザインにしているためだ。