職員室の壁消えた栄光学園 有名OBが込めた母校愛
栄光学園の望月伸一郎校長に聞く

栄光学園の中庭 休憩時間になると生徒がワッと飛び出してくる
栄光のもう一つの特長が「瞑目(めいもく)」だ。"にぎやかな授業"がスタートする前と終わったとき、30秒から1分間程度、目を閉じて黙想する。すべての授業や試験のときに瞑目を繰り返し、これが6年間続く。望月校長は「大学入試のときも、生徒たちは自主的に瞑目するそうです。これで心が落ち着いたという生徒もいます」という。
2017年の大学合格実績は東大が62人。全国8位だが、神奈川県のライバル校、聖光は69人と、最近は後じんを拝すようになった。ただ、16年度の卒業生数は栄光の179人に対して聖光は224人。東大合格者数で36年連続トップの開成高校は162人だったが、同校の卒業生数は398人。合格率でみると、聖光を上回り、開成にも見劣りしない。
少数教育を維持
東大合格ベストテンに入る進学校で定員が200人を下回るのは栄光と筑波大付属駒場高校の2校だけ。「実は新校舎に建て替えるときに、定員を大幅に増やしたらどうかという関係者からの意見もありました。栄光は敷地も広いし、定員を増やすのは難しくはないが、やめました」と望月校長は話す。もともと栄光は少数の生徒を集め、神父らが先生になって勉強をみるだけでなく、様々な相談事も聞き、細やかに面倒をみるのが伝統だった。今、神父はいなくなったが、教師と生徒の密な関係を維持するため、「少数教育にこだわりたい」という。

栄光学園の望月伸一郎校長
栄光出身者は、隈氏に限らず様々な分野で活躍している。元首相の細川護煕氏のほか、経済界では三井物産会長の飯島彰己氏や、日本ケンタッキー・フライド・チキン元社長の大河原毅氏らがいる。解剖学者の養老孟司氏や宇宙飛行士の古川聡氏も出身者だ。望月校長は「卒業生には、豪腕タイプのリーダーというよりも、自然体の人が多いといわれる」という。
開成出身の東大法学部4年生の男子学生は「大学の友人には栄光と聖光の出身者はたくさんいますね。聖光は横浜出身者というプライドが高く明るいタイプが多いけど、栄光はぼくとつでまじめ、研究者タイプが少なくない」という。自然に囲まれた新校舎のなかで、教師と生徒の「壁」が一段と低くなった栄光。さらに多様なリーダーが次々飛び出していきそうだ。
(代慶達也)