芸能人の母校 品川女子、起業家も育てる進学校に
品川女子学院の漆紫穂子校長に聞く

品川女子の生徒たちは歯周病対策のNPOも立ち上げた
「28プロジェクト」と命名して企業との共同作業や起業体験プログラムを実施するほか、なんと卒業後の『就活』も支援している。卒業した大学生の就職活動支援のため、21歳になると、「白ばら就職情報交換会」を開催、企業のOGなどを紹介したり、就職情報を共有したりしている。そして目標の28歳には卒業生を集めて「ホームカミングデー」を開く。再会して現状報告と確認を行う。
中学の志願者5人、経営難の過去も
品川女子と言えば、以前は有名芸能人の通う女子校として知られた。派手なイメージがあるが、しかし「それはたまたま」と漆校長。実は同校は1970年代から80年代にかけて深刻な経営難に陥った。
「両親がこの学校の経営をやっていましたが、中等部の志願者は5人(77年)にまで落ち込み、その後も低迷しました。当時の品女は高卒の職業女性を育成する学校で、しつけ重視。大学進学の要望に応えられなかった」。漆校長は、早稲田大学の国語国文学専攻科を修了したが、品川女子に就職する気はなく、他校で教師となった。だが、母親が体調を崩したこともあって89年に品川女子に移り、結局6代目の校長になった。
女子校の再建は容易ではない。現在、渋谷教育学園幕張校と渋谷校を運営する田村哲夫理事長は父親から、経営難に陥った渋谷女子校(当時)を引き継いだ。校名を変え男女共学制にし、両校を多くの東京大学合格者を出す進学校に押し上げた。広尾学園も同様に破綻寸前の女子校だったが、名前を変え、男女共学にして再建した。しかし、品川女子は学校理念を変えず、女子校を貫いて学校改革を実践し、進学実績も伸ばした。
東大合格者も 志願者は200倍に

生徒が開発に参加した焼き菓子を手にする漆校長
品川女子のOG会会長で、NPO「C-ribbons(シーリボンズ)」代表理事の藤森香衣さんは「当時からモデルの仕事をしていましたが、勉強も忙しかった」という。漆校長は「芸能人は勉強しないというイメージでしょうが、(99年卒の)広末さんは、定期試験の1週間前になると仕事は入れず、勉強を重視していました」という。
99年には品川女子から、初めての東大合格者が出た。同校の1学年の生徒数は約200人。2017年の進学実績は東大や京都大学など国公立大学に計17人のほか、早稲田大学に27人、慶応義塾大学に9人がいずれも現役で合格している。中学入試の志願者は1000人前後に膨らんだ。最悪期と比較すると、実に200倍にV字回復したわけだ。
女子高生起業家の有川さんは「失敗もたくさんしたが、多くの人と知り合い、いい経験をした。今後は大学受験に専念するため、しばらく仕事は休もうと考えている。大学ではメディア論など社会学を勉強して次につなげたい」という。失敗を繰り返しながら、キャリア女子の育成に注力する品川女子。女子校再生の新たなモデルになっている。
(代慶達也)